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これまでは、3・4年生においては、各学校が2年間を見通して、地域の実態に応じて内容の順序や教材の選定等を工夫するなど、地域に密着した学習が弾力的に展開できるように、3・4年生という枠組みでした。しかしどうでしょう? 実際に地域の実情に合わせて弾力的に学習を展開していた学校はどれくらいあったのでしょうか? 狙っていることはまさにカリキュラム・マネジメントでしたが、学年をまたいでの編成は現場では難しかったことと思います。
そこで、今回は3年生と4年生に明確に分けられました。3年生は自分たちの「市町村」、4年生は「都道府県」という棲み分けです。これは非常にわかりやすくなったと思います。空間的な視点で考えたときに、子供たちの視野が徐々に広がっていき、5年生では全国的に、6年生では時間的な視点となっていくという学習構成は、指導する先生方にもわかりやすくなったと思います。例えば、これまで4年生で行われていた警察や消防の学習は、市町村をベースにした方がわかりやすいので3年生に移動になっています。また自然災害については、震災の影響もあり都道府県といった広い範囲で、地形や気象の特色から災害対策の特性を学ぶことが大切であり、4年生で新しく扱うことになっています。
地域単元は各地域でこれまでにさまざまな教材化が行われ、また副読本なども作られていることと思います。それらは、新学習指導要領においても採用していくとよいと思います。しかし、教材構造は見直す必要がありそうです。地域単元はそのオリジナル性から、ネタ重視になりがちで、学習内容を子供たちに合った内容構成にする必要があります。また、社会的な見方・考え方で問いが生まれるような学習問題の積み上げになっているかがポイントです。
例えば、地域単元の導入で当時の写真や年表などをつかって歴史的な見方を促すものにすること、単元中盤ではその社会的事象と関係する人、モノ、コトの関係性が明確であること、単元の出口では他地域ではどうなのか?といった空間的な見方を促す展開が汎用的かもしれません。特に、空間的な視点では、教科書の事例を扱うことで、3・4年生にありがちな教科書を開かない授業といった課題の解決にもなりそうです。
これまでの社会では「人の営み」が重要視されることが多く、社会のために、環境のためにといった社会的事象の意味が重要視される傾向が、授業者に強かったと思います。一方で、「儲け」や「利益」というのは、「お金のために」という表面的な意味にとられることが多く、「儲け」や「利益」が社会にどう影響するのかが教えられてこなかった背景があると思います。利益は社会のために貢献した結果であり、利益をあげることで、社会がよりよくなること、お金が動くことで経済が活性化して、社会がよりよくなることを小学生でも理解させる必要があると思います。例えば、スーパーマーケットが商品を売るのに工夫しなかった場合と工夫した場合とでは、生産者、消費者、販売者にどのような影響がでるのか、プログラミング的思考で一連の組み合わせを考え、社会がよりよくなるためにはどうすればよいかを考える活動も面白いかもしれません。
実際に社会科の研究授業などでは、それまで学んできた事象の価値を覆すような事象を与えることで問いを生み出し、調べてきたことを手立てとして討論するような授業がほとんどだと思います。もちろん社会科は思考・判断も重要ですが、調べる技能や学習のまとめを表現する力も必要です。調査活動などの体験的な活動では目的意識を明確にすることが大切であり、それには「予想」して活動することが大切です。本書の取材シートはそのような「着目点」を記入して、調べ活動に活用できる内容にしています。まとめの学習シートもある程度体裁を整える必要があります。表現力はデザインや見出しの良し悪しではなくて、社会的な事象の意味を空間的・時間的に相互関係でとらえているかが求められます。
社会科を好きになるか、嫌いになるかは小学校3・4年での影響が大きいでしょう。最も人気がない教科ともいわれる社会科は、教師が最も教えにくい教科ともいわれます。その要因の一つは、社会的事象の意味という見えないものを教えるという教科性にあります。また、3・4年生は地域の教材化が中心となり、副読本ばかりつかって教科書をつかわない傾向があるように思います。しかし、教科書は学習指導要領の内容を反映させ、国から検定をうけたものです。この教科書をしっかりとつかう授業構成にすることをおすすめします。地域単元の学習で副読本が中心となっても、教科書で提示されている地域と比較するなど授業の中で教科書を開く場面をつくってほしいと思います。やはり、子供たちが「教科書はつかわないんだよね」という印象をもってしまうとなんとなく「社会科」は他の教科と違う……というイメージになりやすいです。社会科嫌いはそんなところから生まれているかもしれません。本書は教科書を活用できる内容になっています。ぜひ、教科書を開いて活用してください。
