- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
本書は僕の代名詞にもなっている「10・100」の体裁を採っています。「10・100」は「10原理」の方は普通の本のように前から後ろへと読んでいただくことを想定していますが、「100原則」の方は必要なところ、気になったところ、好きなところ…要するに、どこから読んでいただいても良いように編集されています。その意味で、読者が選択をしながら、ある種の主体性を発揮できるように構成したつもりです。
僕は「働き方改革」はあまりにも労働者の負担ばかりが取り上げられ過ぎていると感じています。「負担」というのはその人その人の力量によって変化する相対的なものに過ぎません。同じ仕事でもその仕事をこれまでに経験している人にはそれほどの負担にならない。でも、初めてその仕事をする人には負担になる。でも、その負担を経験しないことには負担にならない段階は永久にやって来ない。そういうものに過ぎません。とすれば、第一義的に大切なのは「力量を高めること」であって「負担を減らすこと」ではない。「負担を負担と感じなくなるためにできること」を考えた方がいい。そう感じています。
時間を効率的に使うことにも同じ原理があります。1時間で8の仕事しかできない人もいれば、同じ1時間で30の仕事をできる人もいる。平均的に1時間で15の仕事をするのが一般だとすれば、8の仕事しかできない人に必要なのは「負担を減らすこと」ではなくて、取り敢えず1時間に15の仕事をできるように力量を高めることです。そして、1時間にできる仕事を8から15へ、15から20へ、20から30へ増やしていくためには、その仕事に関することのみならず、その仕事が何とつながっているか、職員室はいまどういう状況か、全国的な教育状況は現在どのような方向にすすんでいるかなど、視野を大きく取れるようにならなければなりません。そうした視野をもつためのミニマム・エッセンシャルズを100原則として示した…というような意識が僕にはあります。
基本的な方向性としてはそれほど変わりはないと思っています。ただ、方向性は変わりませんが、一つ一つの仕事の仕方は詳細に考えられるようになったというか、緻密に考えられるようになったとは思っています。その意味では、15年前とはずいぶんと変わっているとも言えます。まあ、15年近くも経ってまったく変わっていないのでは困りますけどね…(笑)。
負担を減らしたい。できるだけ時間を使わずに仕事をしたい。自分の時間を確保したい。その気持ちはわかります。しかし、ただ拒否する、ただ効率的にこなす、ただ公私を分けるという感覚でいると、この変化の著しい時代、いまはよくてもいずれ立ちゆかなくなります。「仕事術」というのは、「変化に対応できること」の中に位置づけられるものであり、時代の変化に対応して「自らを変化させられること」を念頭に置いて抽出されるべきものであると考えています。僕のような、そろそろ退場も視野に入っている人間ならともかく、若い人たちには「働き方改革」も「仕事術」ももっと大きく捉えてほしいな…と感じています。