- 著者インタビュー
- 特別支援教育
特別支援教育は個の教育的ニーズに応じることが本質です。しかし、学校においては、気になる子も集団の中の一人であるわけです。従って、特別支援はその子が属する「集団への指導」とそこでの「個別の支援」の両面から考えていくことになります。本書はその両面からのアプローチについて示すことで、そのバランスを意識した指導を行えるようにと考え執筆したものです。
先ほどもお話しした通り、「集団」と「個」へのアプローチのバランスを考えることが重要になると思います。「個」だけを見つめて理解し支えようとしても難しく、また「個」の理解のない状態で学級集団の安定だけを考えても難しいでしょう。まして、すべての子どもが同じように活動できるための手だてではなく、指導の前提として子どもたちの様相が「多様」であることを基盤とすることが大切だと思います。
通常の学級の先生方が「まずはここまで!」的に学べる書籍を作りたいと思いました。しかし、それを単なるアイディア集ではなくて、子どもの事実を見てその背景要因について検討したうえで「集団」と「個別」の両面からのアプローチを試みる、という教員の「思考の仕方」を身につけられるものにしたいと考えました。この「思考の仕方」は、汎用性があり、子どもとの様々な場面で活用できるからです。
いわゆる交流および共同学習においては、特別支援学級と通常の学級の担任間で、細やかな連携が必要になります。教育目標や具体的な支援方法については、個別の指導計画等で、それらを共有しておくことが大切です。また、日常の「すきま」の時間を活用して相互に少しでも連絡を取り合い、子どもたちの様子を共有するための工夫も求められるところです。
多様な子どもたちが在籍するのが当たり前の学級集団で一人ひとりの子どもたちを育てるためには、これらの取り組みを複合的に行っていくことが重要です。中でも多様な実態の子どもたちの理解と関係づくりを基盤とした学級経営が求められます。と同時に、子どもたちの多様な学び方に応じる各教科の授業づくりをさらに進められるように取り組んでいくことが今後の大きな課題だと考えています。
特別支援において、個を見つめる際には「集団の中の個」という見方が重要です。本書で私たちは、集団と個のバランスを意識して、スキルを学んで実践していくことを提案しています。この提案が、多くの支援を要する子どもたちだけでなく、その周りのすべての子どもたち、そして多くの大人にとって少しでも役立つものになれば幸せです。