- 著者インタビュー
- 道徳
本書では、授業のユニバーサルデザインを「より多くの子どもにとってわかりやすくデザインされた授業」としています。道徳授業は、主に「言葉のやり取り」によって、成り立っています。こう考えると、道徳授業のユニバーサルデザインとは、「言葉のやり取りをわかりやすくすること」と言えます。つまり、道徳授業の「言葉のやり取りをわかりやすく」すると、より多くの子どもにとって道徳授業がわかりやすくなるのではないかと思います。
「他者の心情を類推すること」が、道徳科のねらいではありません。しかし、これまでの道徳授業では「〜の気持ちは?」という発問が中心だったように思います。
道徳科のねらいを達成するためには、あくまでも本時のねらいに迫る効果的な発問を考えていく必要があります。心情理解に偏る必要はありません。どうしても、他者の心情を類推する発問が必要であるならば、例えば「選択肢を示す」といった手だては、「あると嬉しい」支援になります。
継次処理型の子どもはひとつひとつストーリーのある「順序性」から、同時処理型の子どもはパッと見た目でわかる「全体性」から、物事を理解するのが得意という認知のスタイルです。どちらがいいという話ではありません。例えば、道徳授業でよく見られる「イメージマップ」の板書は「全体性」という点では優れていますが、「順序性」という点ではどうでしょうか。継次処理型の子どもの認知スタイルとの相性は合いません。「全体性」と「順序性」をハイブリッドして、板書やワークシートを作っていく視点があるとよいと思います。
多くの先生方は、「授業のねらいに基づくこと」「教科書を活用すること」「支援の必要な子どもに対応すること」を、学校現場にて求められているのではないでしょうか。そのような学校現場のニーズに正対していくことを、私もまず意識しました。また、本書はユニバーサルデザインの書籍ですので、3章はなるべく、より多くの「先生」にとっても「わかりやすい」授業プランになるようにしたつもりです。いかがでしたでしょうか。
ユニバーサルデザインの視点による授業改善は、発問や板書等の指導技術の改善という印象があるかもしれません。しかし、ユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業改善を進めていくと、学級の子どもたちへの深い児童理解や、授業のねらいを達成するための深い教材解釈が必要になってくることに気づかれるでしょう。私は、ユニバーサルデザインの視点による道徳授業づくりは、とてもクリエイティブで、魅力的だと感じています!