著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ユニバーサルデザインの考え方を道徳授業に取り入れる!
東京学芸大学教職大学院准教授増田謙太郎
2018/8/21 掲載

増田 謙太郎ますだ けんたろう

東京学芸大学教職大学院准教授。
東京都町田市出身。東京都内公立小学校教諭(特別支援学級担任)、東京都北区教育委員会指導主事を経て、現職。専門はインクルーシブ教育、特別支援教育。

―本書では、ユニバーサルデザインの視点を取り入れた、どんな子どもにとっても、わかりやすく考えやすい道徳授業を提案していただいています。はじめに、道徳授業のユニバーサルデザインとはどのようなものか、教えてください。

 本書では、授業のユニバーサルデザインを「より多くの子どもにとってわかりやすくデザインされた授業」としています。道徳授業は、主に「言葉のやり取り」によって、成り立っています。こう考えると、道徳授業のユニバーサルデザインとは、「言葉のやり取りをわかりやすくすること」と言えます。つまり、道徳授業の「言葉のやり取りをわかりやすく」すると、より多くの子どもにとって道徳授業がわかりやすくなるのではないかと思います。

―「はじめに」でご指摘されていますが、「他者の心情を類推することが難しい」という特性のある子どもには、今までのように「〜の気持ちは?」という発問は難しいというお話が印象的でした。では、教室にそのような特性がある子どもがいる場合、どのような視点で発問を考えていけばよいのでしょうか。

 「他者の心情を類推すること」が、道徳科のねらいではありません。しかし、これまでの道徳授業では「〜の気持ちは?」という発問が中心だったように思います。
 道徳科のねらいを達成するためには、あくまでも本時のねらいに迫る効果的な発問を考えていく必要があります。心情理解に偏る必要はありません。どうしても、他者の心情を類推する発問が必要であるならば、例えば「選択肢を示す」といった手だては、「あると嬉しい」支援になります。

―2章の「視覚的な支援をチェンジする」の中に書かれていますが、継次処理型の子ども、同時処理型の子ども、それぞれへの配慮を……というお話も興味深かったです。両タイプの子どもを意識した配慮について、改めて教えていただけますか。

 継次処理型の子どもはひとつひとつストーリーのある「順序性」から、同時処理型の子どもはパッと見た目でわかる「全体性」から、物事を理解するのが得意という認知のスタイルです。どちらがいいという話ではありません。例えば、道徳授業でよく見られる「イメージマップ」の板書は「全体性」という点では優れていますが、「順序性」という点ではどうでしょうか。継次処理型の子どもの認知スタイルとの相性は合いません。「全体性」と「順序性」をハイブリッドして、板書やワークシートを作っていく視点があるとよいと思います。

―3章では、ユニバーサルデザインの視点を入れた、多様な授業プランをご紹介いただいております。増田先生が道徳授業を構想するとき、特に気をつけられていることは、何でしょうか。

 多くの先生方は、「授業のねらいに基づくこと」「教科書を活用すること」「支援の必要な子どもに対応すること」を、学校現場にて求められているのではないでしょうか。そのような学校現場のニーズに正対していくことを、私もまず意識しました。また、本書はユニバーサルデザインの書籍ですので、3章はなるべく、より多くの「先生」にとっても「わかりやすい」授業プランになるようにしたつもりです。いかがでしたでしょうか。

―最後に、本書を読んで、ユニバーサルデザインの視点を取り入れながら、道徳授業をさらに充実させていこう!という読者の先生方にメッセージをお願いします。

 ユニバーサルデザインの視点による授業改善は、発問や板書等の指導技術の改善という印象があるかもしれません。しかし、ユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業改善を進めていくと、学級の子どもたちへの深い児童理解や、授業のねらいを達成するための深い教材解釈が必要になってくることに気づかれるでしょう。私は、ユニバーサルデザインの視点による道徳授業づくりは、とてもクリエイティブで、魅力的だと感じています!

(構成:茅野)
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