- 著者インタビュー
- 算数・数学
まずChapter1は、授業UDやUDLなど、学校教育におけるユニバーサルデザイン(UD)についてまとめ、ここを読んでいただければUDの授業づくりや配慮事項が何であるかがわかるようにしています。また、Chapter2は、各事例で授業のねらいや生徒につかませたい数学の本質、UDの授業づくりに向けた視点、授業の実際を取り上げ、その背景にある考え方と具体的な教材、実際の生徒の反応をもとに、誰もが授業づくりを行えるようにしています。
Chapter2は、学習指導案を通した提案ではなく、数学的活動を通した学びの場面とその実現に向けたUDの視点を取り上げています。もちろん、実践事例は公立中学校などで実際に行われた授業がもとになっていますので、各項目を見て学習指導案を作成することができます。特に、「ユニバーサルデザインの授業づくりに向けて」は、学びの土台・学びの過程・学びの成果など、何を目指して授業を行うかの指針になると思います。
確かに、本書では第1学年の素因数分解や第2学年の箱ひげ図の扱いなど、新学習指導要領に対応した実践事例も取り上げています。また、授業における学びを通してどのように生徒に数学の本質をつかませ、どのような評価の観点をもって行うかなども、新学習指導要領に対応させています。これからの数学授業では、生徒の学びをどう実現していくのか、その中で数学の本質をどう学ばせるのかがより大切になってくるのではないかと思います。
本書で取り上げた教材は、現職教員向けの研修で紹介した際の手ごたえからも、数学教育に携わる者にとって興味深く実践したい内容なのではないかと思います。教師にとっておもしろい教材は、生徒にとっても考えたくなる教材です。また、アクティブ・ラーニングが生徒の主体的で対話的な深い学びの実現を目指している以上、生徒の学びを支えるUDLの視点は、すべての生徒を学びのエキスパートとして育成していくためのヒントとなることでしょう。