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- 著者インタビュー
- 学級経営
世の中には「こんなときに、こうすればよい」という方法論を示した書籍はたくさんあります。しかし、教室の現実は、教師の想定を超えることがしばしば起こります。特に学級経営や生徒指導場面においては、「こうすれば大丈夫」などという万能薬はないわけです。アドラー心理学は、教師の想定を超えるような場面にも確かな指針を与え、読者のみなさんのやるべきことを明確に示してくれます。
アドラー心理学では、子どもたちの不適切な行動には、目的があると考えます。そのことから「不適切な行動に注目しない」という一つの対応の方向性が見出されます。これは、有効な解決策の一端ではありますが、それだけではエスカレートする可能性があります。どうしたらよいかは、本書をご覧ください。
学級崩壊のパターンは幾通りもあろうかと思われますが、子どもたちの不適切な行動にそのきっかけがある場合は、不適切な行動に教師などが過剰に注目していることが挙げられます。教師は知らず知らずに気になる子ばかりに注目しているのです。不適切な行動が継続する場合は、必ず、それを強化し引き出している相手役がいるのです。場合によってはそれは、教師である「あなた」かもしれません。荒れのサインを見るときは、荒ればかりを見るのではなく、荒れの前後を一つのシステムとして見るとよいでしょう。
「勇気づけ」は、言葉がけだと解釈されている場合がありますが、それは正確ではありません。「勇気づけ」は考え方であり技術です。何よりも、まずは、その子を尊敬し信頼するという教師側の構えがないとうまくいかないことでしょう。勇気づけがうまくいくかどうかは、勇気づける側が相手をより早く尊敬し、より多く信頼できるかどうかにかかっています。
共同体感覚はアドラー心理学でよく使われる言葉ですが、少し取っつきにくい言葉ですね。簡単に言うと「他者への関心」や「人とつながっているという実感」です。私たちの幸福感は、この人とつながっているという感覚が大事なのです。私たちは人に貢献することで、人とつながり幸福感を高めます。これが「幸せのサイクル」です。しかし、不適切な行動をする子どもたちは、人とつながりたいのに、適切な方法を知らないがために不適切なことをし、さらに人とのつながりが切れていくという「不幸せのサイクル」真っ只中にいます。共同体感覚を育てることで子どもたちは適切な行動をするようになります。「不幸せのサイクル」から脱し、「幸せのサイクル」を回し始めます。
私は、アドラー心理学に出会わなかったらきっとクラスの荒れに飲み込まれていたことでしょう。日々起こるクラスのトラブルに自分を見失っていたことでしょう。アドラー心理学はそんな悩める教師に、学級経営の基盤となる考え方から、子どもたちへの具体的な声かけまでを示してくれます。アドラー心理学の活用は、子どもたちを勇気づけるだけではありません。何よりも、教師が勇気づきます。子どもに渡した勇気は必ず自分に返ってきます。本書が、勇気あふれる教室づくりの一助となればこれにまさる幸せはありません。
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