- 著者インタビュー
- 道徳
学校現場での,道徳の授業への関心が高くなったと感じています。この1年間で道徳の研修会を実施した学校も非常に多くありましたし,道徳の研修会に参加される先生も多くなりました。これをきっかけに,今まで道徳の授業にそれほど熱心でなかった人たちの関心が高まってくれればと思っています。さらに,先生方の道徳科への理解も深まり,指導力も格段に伸びることを期待しています。そうなると全国的に道徳教育が充実していくでしょう。
他の教科でも同じですが,最も大切なことは「ねらい」です。特に道徳科では,子どもにとって分かりきったことを1時間の「ねらい」にしないようにしなければなりません。もともと分かっていることを教えられたり,できるようになることを求められたりする道徳学習は,子供にとっては非常につまらない学習と言わなければなりません。内容項目は,授業を考える窓口であって,それが「ねらい」ではないのです。授業は,その1時間で子供に学びや気づきがなければならないはずです。それを明確に示したものが本時の「ねらい」であり,それをめざして授業を設計しているのです。
評価は,「教育評価」でなければならないと考えています。「教育評価」というのは,教育活動自体がどの程度に成功であったかを,子供の姿の中から見て取ることです。それは,子供一人一人の学習の成果を評価することでもあります。そのためには,その学習によって培われたもの以外の要因をできるだけ取り除いて, 学習の成果だけを評価の対象にする必要があります。そうすると,1時間で子供が何を学んだかが重要な視点になります。私は,学習の最後に子供に「分かったこと」を書かせます。それをもとに評価文を作成します。
その1時間で達成可能で,子供にとって分かりきったことではない具体的な「ねらい」の設定が本実践集の見どころの一つ目です。二つ目は,その「ねらい」に向けての授業設計(発問構成)です。分かりきった「ねらい」ではないので,発問も子供が本気で考えたくなるものになっています。三つ目は,子供一人一人が何を学んだかを道徳ノートの「分かったこと」から見取り評価することです。子供はねらいを知らされていませんから,子供が書いたことは,子供自身が学んだと考えたことです。それをもとに評価文を作成します。
「道徳授業は分かりにくい」と思われているようです。そのため,授業の型から入ったり,授業方法から入ったりする人が多いようです。しかし,大切なことは,その授業で子供に何を学ばせることができるかです。それが分かれば,自由に授業が作れるようになりますし,様々なアイデアも湧いてきます。本実践集をもとに,道徳の授業で何を学ばせることができるかについての理解を深めてください。そして,自由な発想で,子供が本気になって考える授業をつくっていってください。