- 著者インタビュー
- 特別支援教育
最先端で活躍されておられる先生から長年にわたって現場の授業を大切にしてこられた先生の実践を凝縮した内容にしました。単に方法論に頼ってうわべの指導方法を実践するのではなく、しっかり子どもを理解したうえで、基本の学習環境から各教科の配慮までをまとめた本です。提示した内容のとおり実践するのではなく、目の前の子どもたちに合わせた形でアレンジし、実践していただきたいと考えています。
ユニバーサルデザインは、 “すべての人が人生のある時点で何らかの問題・困り感をもつ”ということを、発想の起点としている点で、それまでのバリアフリーとは大きく異なっています。このUDはすべての子どもたちを対象にしているということです。多様な学び方に対し柔軟に対応できる、視覚や触覚に訴える教材・教具や環境設定が準備されている、欲しい情報がわかりやすく提供される、間違いや失敗が許容され、試行錯誤をしながら学べる、現実的に発揮することが可能な力で達成感が得られる、必要な学習活動に十分に取り組める課題設定がなされている等が必要になってきます。
「合理的配慮」は施設設備だけではありません。子どもの障害の状態や特性等を踏まえた指導法の工夫、意思疎通のための支援も含まれます。特に通常の学級での授業をする場合、障害だけに着目するではなく、子どもの認知特性や家庭背景、心の問題等を踏まえた授業の在り方や教材の整備等が必要になります。子どもの実態を把握し、それに合った準備をすることそのものが「合理的配慮」と言えます。
UDについての専門的知識を持たない教員が安易にUDの発想を用いることによって、教員が勝手に想定した「児童・生徒像」に目の前の子どもたちをあてはめて形だけをまねている場面をよく見ます。本来は一人ひとりの児童・生徒を見つめて、それぞれに合った指導を行うことが求められているにもかかわらず、実際の学校現場においては表層的なメソッドだけが独り歩きして、UDの「誤用」をさらに拡散する原因にもなっています。授業が成立し、学級がうまく機能するためには子どもの実態がわかっていないとできません。子どもの実態を見る目をもっと増やす必要があります。
子どもがどこで困っているか、何が得意か、なぜこんな行動をするのかのように「なぜ、どうして」という疑問を持つことが大切です。例えば「字が書けない」⇒「なぜ?」⇒「形が理解できない」⇒「なぜ?」⇒「線の交差しているところがわからない」⇒「なぜ?」⇒「正中線交差の問題」・・・という具合になぜを繰り返していくと、原因がわかります。そうすると対処療法だけでなく、原因解決の手段につながっていき、指導の手段が広がっていきます。失敗を繰り返してきた原因がわかり、自信を持たせるような指導の工夫につながっていきます。