- 著者インタビュー
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いくつか思いを込めていますが、一番のねらいは、配慮や支援を要する児童の困り感を解消することです。
物事を認知する方法には、聴覚優位、視覚優位、言語優位等があり、それぞれに適切な支援を行うことで学習が円滑に進みます。聴覚優位の児童にとっては、音声中心の外国語活動は楽しく取り組める授業だと思います。では、視覚優位や言語優位の児童にとってはどうでしょうか。その困り感を解消する支援の一つが板書だと考えています。構造的に組み立てることで、視覚優位、言語優位の児童への支援になります。全時間の全板書を掲載した本書を、そのヒントにしてもらいたいと思っています。
はい。あと二つあります。
一つは、ふりかえりを充実させることです。残念ながら、外国語活動の板書は、めあてと絵カードで終わることが多くあります。しかし、これだけの情報では、「ふりかえりを書きましょう。」と指示しても、書くことが浮かばない児童は「楽しかったです。」で終わってしまいます。しかし、授業での気付きや発表の工夫等を黒板に書き残しておけば、児童のふりかえりが激変します。これは、新学習指導要領における「主体的に学習に取り組む態度」の育成にもつながってきます。
もう一つは、働き方改革の一助にしたいということです。本書の板書例を見て、何が必要かをパッとつかんで準備を行い、授業中の板書を構造的にしてほしいと思います。本書を活用いただけたら、それが短時間で行えると思います。
すでにある物を、うまく活用することだと思います。
Let’s Try! には、デジタル教材が用意されています。それを使えば、絵カードをすぐに作ることができます。本書で示す絵カードはデジタル教材に含まれているものが基本ですので、板書例を見て「このカードが必要だ。」と分かれば、後は印刷するだけです。
授業中も、画期的な活動を毎回行う必要はなく、基本的な活動に一工夫するだけで学びが深まります。本書では、一工夫のポイントをアイコンで示し、ひと目で分かるようにしています。
「苦手」をメリットにすることだと思います
そもそも、外国語の授業は、「英語」を教えるのではありません。「コミュニケーション能力」を養う授業です。
では、コミュニケーション能力がある人とはどんなイメージでしょうか。この質問に対する答えで多いのが、相手の思いを推測しながら思いやりを持って聞いたり、相手に伝わるように試行錯誤して英語を使い、何とか自分の思いを伝えたりしようとするというものです。「英語ができる」は第一義にはならない傾向があります。そう考えると、英語が「苦手」な先生ほど、「コミュニケーション能力を発揮する場面」を児童に見せることができると思います。そしてそれを繰り返すことで、実は先生自身が自分を成長させていることに気付き、いつの間にか外国語活動の授業を楽しめるようになっていくと思います。
「何を言われたか」よりも、「誰に言われたか」が人には大きく影響すると言われます。ぜひ英語が「苦手」な先生は、実際のコミュニケーション場面における自分の立ち振舞いで、児童の力を伸ばしてほしいと思います。その土台があってこそ、多くの人と関わるために英語を使えるようになりたいという意欲が育つのだと思います。
外国語活動ではコミュニケーション能力の素地を養います。この力が育てば、他教科の授業も確実に良くなります。私の経験で言えば、算数科で分からなくて困っている友達に教えてあげたり、体育科で協力して準備をしたりする場面が増えてきます。そう考えると、外国語活動は小学校教育の素地を育てていると思えてきます。
本書を活用しながら外国語活動の授業を充実させることで、小学校教育全体をより良くしてほしいと思います。