著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教室を子どもに明け渡そう
学校法人茂来学園大日向小学校 校長桑原 昌之
2020/3/12 掲載
今回は桑原昌之先生に、新刊『どの子も輝く教室のつくり方』について伺いました。

桑原 昌之くわはら まさゆき

1967年生まれ。
「人生という名のボールは転がり続ける。」
子どもの頃からサッカーやバレーボールなどの球技に親しみながら成長し小学校教諭となる。
1992年より神奈川県伊勢原市内の公立小学校教諭、総括教諭、伊勢原市教育センター研修指導主事などを歴任。
2008年度に「JFA(日本サッカー協会)Sports Managers College本講座」を受講したことから授業スタイルを一斉授業から対話型へと変える。2010年度には「早稲田大学大学院スポーツ科学研究科」を修了しスポーツマネジメントの観点からも学校を見つめ直す。2012年夏、オランダでイエナプランに触れ公立小学校に導入できないかとチャレンジ。現在は長野県南佐久郡佐久穂町にある学校法人茂来学園大日向小学校の校長を務める。

―本書では、現在日本初のイエナプランスクールの校長先生でいらっしゃる桑原先生の、公立学校在籍時代の実践が語られています。その中で軸となっている「スポーツマネジメント」の考え方について、なじみのない読者の皆様へご解説いただけますでしょうか。

 私の場合、Jリーグクラブなど地域のスポーツクラブをどのようにマネジメントしていくのかというのが主な研究課題でした。地域に根ざしたスポーツクラブができることで、そこに住む人々やクラブに関わる人たちが幸せになるにはどうすればいいのか。クラブのビジョンやミッションはどうあるべきなのか。どんな人材が求められ、どんな物が必要で資金集めはどうするのか、そして、人々を楽しませるプロダクトをどうするのかを徹底的に考えていきます。
 このような学びの主語をスポーツマネジメントから学校、学級に置き換えて実践を繰り返してきました。

―先生が力を入れてこられた「スポーツマネジメント」と、現在の先生の実践を形づくっている「イエナプラン教育」。一見遠いテーマのように感じますが、2つには何かつながりがあるのでしょうか。

 スポーツには「する」「みる」「ささえる」というように、一人ひとりちがう楽しみ方があります。大好きなスポーツをプレーすることで楽しむ人もいる。プレーしている人たちをみるという楽しみ方もある。サポーターとしてスポーツを支えてくれる人たちもいる。
 イエナプランでも、一人ひとりの子どもたちを大切にするというコンセプトが根底にあります。
 つまり、スポーツでも学校でも関わり方は三者三様、それぞれが違っていいのです。

―本書では、先生も子どもも、それぞれの得意分野を生かすことの重要性が繰り返し強調されています。その理由をズバリ教えていただけますでしょうか。

 先生も、学校に通う児童・生徒も「ひとりの人間」です。
 「理想の先生像」や「理想の児童・生徒像」に掲げられているようなモデルにだけ縛れていると個性が全く見えませんし、みんなが同じような人に見えてしまいます。
 誰もが、もともと持っているような得意なことや好きなことを十分に生かすことで個性がグッと全面に出てきて、お互いの心理的な距離もグッと近づきます。すると、結果として教室でも職員室でも、組織としての質が向上していきます。これが、それぞれの得意分野を生かすことが重要である理由です。
 ですから、先生たちには、先生である前に「ひとりの人間として子どもたちと接する」ことを心がけてほしいと思います。

―もうすぐ4月です。本書で語られているような「子どもが輝く教室」をつくるために、学級開きの際に担任の先生が押さえておくべきことを教えていただけますでしょうか。

 「教室の主役はだれか?」を確認してほしいと思います。そして、先入観を捨てて、どのような子どもたちがいるのかをじっくりと観察してほしいと思います。前年度から引き継がれているネガティブな情報は捨てるくらいの覚悟も必要です。
 まずは、徹底的にポジティブな面を見つけていくことで、子どもたちにも「ポジティブめがね」を装備してあげるといいと思います。
 そして、何よりも重要なのが「オープンマインド」です。先生としての前に自分をさらけ出すことで子どもたちは安心するはずです。

―最後に、読者の皆さんに向けてメッセージをお願いいたします。

 私たちは「先生」など肩書きで呼ばれることがあるわけですが、その前にひとりの人間として子どもたちを含めた多くの人々とたちと接していけたらいいのではないでしょうか。
 私もそうですが、皆さんも「一人ひとりかけがえのない価値をもっている」わけですから、その個性を「これでもか!」というくらいに発揮して毎日を過ごせたら幸せなんじゃないでしょうか。
 本書が、それぞれの皆さんの「人生という名のボール」を転がし続けるヒントになれば幸いです。

(構成:小松)

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