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優れた授業には必ずその背景に優れた準備がある。たくさんの先生方との共同研究を通して、そうした実感を強くもっています。ではその準備をいつどのようにしていけばいいのか、参観者として提案された授業をどのように見ていけば今後に生かせるのか。そこには従来、あまり光が当てられてこなかったとも感じています。本書はそうした、授業の成功に向けた道筋と授業研究の成果を更なる授業改善に生かす視点を取り上げたものとなっています。
今、多くの教師が、再び子供たちと授業を行えることを心待ちにしていらっしゃることでしょう。今は動けない、けれど何か準備をしたい。そんな思いの先生方もたくさんいらっしゃることでしょう。本書はそうした方々の熱い思いにも応えられるものとなっています。また、研究主任を務める方々や、近い将来学校の研究を推進する立場を目指している若い先生にも、研究推進構想のヒントを得ていただけるような内容も盛り込みました。子供たちのことを思い描きながら、授業の準備や研究構想を進める際にご活用いただければ幸いです。
最大のコツは「そこで付けたい力は何か、そしてその学びは、子供にとって目的や必要性を実感できるものか」を常に問うことです。とりわけ国語が苦手な子を常に念頭に置いてみましょう。その姿から、子供が動き出すヒントが豊富に見つかるはずです。「これを教えなければ」と思うこともあるかもしれませんが、教えただけでは子供が学んだことにはなりません。子供の学びの姿をつぶさに見ることは意外に難しいものです。私も「見れども見えず」ということばかりでした。そうしたときには、他者の授業における子供の姿の観察から大きなヒントが見えてくることがよくあります。本書ではそうした参観や授業記録の視点も解説しています。
授業が「教材を」教えることだととらえるならば、教材が変わったら、教え方も全て変えなくてはいけません。しかし、授業を「教材で」教えることだととらえたらどうでしょうか。新教材に変わっても、指導事項の趣旨をしっかりつかんでいれば怖くはありません。加えて、目の前の子供たちにぴったり合った教材や言語活動の開発を、自信をもって進めることもできるのです。
本書では、Chapter1〜4までに、研究授業に向けたチェックポイントを、チェックリスト形式で提示しました。これに、ご自身のオリジナルのチェック項目を加えながら、本書をご活用いただきたいと願っています。なぜなら本書は、数千もの授業提案からボトムアップで導き出された知見を集積したものだからです。今、困難な状況の中にあって、子供たちのための授業改善を目指す読者の皆様の一助となればと願っています。