- 著者インタビュー
ズバリ一言で言うと、話し方の基本を押さえているかどうかの違いです。
授業の上手な先生、学級経営がすばらしい先生は例外なく基本が身に付いています。
話し方の基本とは、以下のスキルのことです。
・視線
・一人称の指示
・端的な指示
・数字を入れる
・抑揚
・静まるまで話し始めない
・聞く姿勢を整えさせる
・質問は最後
・最後に聞き方をきちっと評価する
これらのスキルはセンスや才能ではありません。ちょっとしたコツさえわかればどんな先生でもマスターできます。そのやり方については、本書でくわしく解説しています。
「話す内容」とは、先生のセリフのことです。
子どもに伝える具体的メッセージであり、文字で表現できるものです。「教えたい!」「伝えたい!」「届けたい!」思いを言語化したものです。
「伝え方」とは、よりよく伝えるためのテクニックのことです。
「話す内容」さえ良ければいいのかというと、そうではありません。「話す内容」がいかによくても、それを効果的に伝える工夫が無ければ、子どもには届きません。「伝え方」のテクニックを習得することで、10伝えたいことが10以上の効果をもって伝えることができるようになるのです。
「タイミング」とは、伝える時間と場所を選ぶということです。
同じ言葉でも、受け止める側の構えや状態、時期により伝わり方は大きく異なります。
いかに話す内容が良くても、いかに伝え方がうまくても、相手に響かないことがあります。反対に、話す内容が不十分であったり、伝え方がさほど上手でなかったりしても、タイミングが合えば強く心に響くことがあります。
「聴く力」とは、相手のニーズを引き出すための力のことです。
相手が気持ちよくコミュニケーションをとりたくなるような言葉かけや、相手の思考を活性化させる問いかけがあります。「聴く力」が向上すると、相手は自分に心をどんどん開き、信頼関係がを築くことができるようになります。
エピソードに関してはたくさんあるのですが、ここでは書ききれませんので、エピソードを思い出すうちに浮かんだことを記します。
それは、言葉は関係ない。言葉は最後だということです。言葉について書いた本の紹介のなかで、一見矛盾するようですが、大事なので述べます。
どういうことかというと、言葉は「その人」の口から出るということです。つまり、「その人」がどんな人であるかということが、実は言葉よりも大切なのです。よく言われる、「何を言ったのか」ではなく「誰が言ったのか」が大事になってきます。
たくさんの先生にほめ言葉をもらうよりも「あの先生」にほめられた言葉が忘れられません。「あの先生」以外の人から言われるのは何とも思わないのに、「あの先生」から言われると胸に刺さる。「あの先生が言うんだからついていこう」。
私を突き動かしたのは、言葉そのものではなく、常に私の尊敬する人から出た言葉でした。
最も読みたいと思うところから読み始めてください。通して読んでも、飛ばして読んでも気づきが生まれるよう工夫して書きました。
本書をはじめ、たくさんの本を読み、たくさんの授業を参観し、たくさん教材研究し、たくさん子どもとかかわり、たくさんの経験をとおして教師力を高めていってください。
言葉磨きと、人間磨きを並行していく過程の中で、ふと気づくと子どもに伝わるのが当たり前な自分に成長しているはずです。