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まず考えなければならないのは、コミュニケーション力は指導しなければ普段の生活の中だけでは身に付かないということです。子供がコミュニケーション力をつけていくためには、繰り返し意欲的に取り組めるように、ゲーム化したり、授業の中で友達と一緒に楽しく取り組めるようにしたりする工夫が必要になります。それらの活動を繰り返し行うことを通して、子供たちはコミュニケーションの楽しさ、大切さに自ら気付いていきます。そして、人と進んで関わろうとする姿や友達と協同してよりよい生活を作っていこうとする姿が見られるようになってきます。
これまでも国語科で「話す」「聞く」「話し合う」の指導はなされてきました。しかし、それがコミュニケーション力の向上にはなかなか結びつきませんでした。それは、知識や技能は分かって使う練習はしたけれども、実際の生活とつなぐ意識が薄かったからだと考えられます。それを解決するために、身に付けたコミュニケーションに関する知識や技能を活用する場として、日常や帯時間、各教科や総合的な学習の時間、特別活動、行事などを意図的・計画的につないで、その時間の中で指導したり、指導したことを活用したりする必要があります。それを考えて、本書にはコミュニケーション年間指導計画の例を載せています。ぜひ参考にしていただき、どの場面で活用できるかをご自分でも考えてみてください。
イチ押しとなると、ディベートでしょうか。ディベートは、低、中、高学年全てに入れています。教科書にはありませんが、国語の「話す・聞く」の学習の時間などを調整して、ぜひ学期に1回は行いたい学習です。なぜなら、ディベートは既習の知識・技能、態度などをすべて活用して行っていく総合的な学習だからです。ディベートの学習を有効にするためには、他のコミュニケーション・トレーニングで確かな力を付けておくことが大事になってきます。ディベートを通して、話し合う力の技能もですが、相手を尊重して話し合う力を育てたいと思います。
コミュニケーション・トレーニングでは、表現する力を育てるトレーニングもあるし、態度を育てるトレーニング、友達との関わりを深めるトレーニングもあります。コロナ禍で特別な時期ではありますが、これまで学んだコミュニケーション・トレーニングを活用して、毎日の生活で実践していきます。自分のことだけでなく相手のことを考えて、相手に迷惑がかからないようにどのような話し方・聞き方をすればいいか、相手にいやな思いをさせないようにどのような態度で接すればよいのか、密にならないように友達とどのように関わっていけばよいかなど、実際の場で考えて行動できるように支援をしていきます。
私はこれまで国語科を中心に、コミュニケーション力の育成について研究をしてきました。これまでの自分の「話す」「聞く」「話し合う」の指導がコミュニケーション力の向上になかなか結び付かなかったのは、コミュニケーション力についての自分の理解が浅かったことがあります。今回、改めてコミュニケーション力についてまとめることで、指導の見通しが持てたように思います。
第1章では、コミュニケーション力とは何かを自分なりに明確にし、「コミュニケーション力を支える10の力」としてまとめました。10の力について詳しく知ることで、コミュニケーション力を育てるヒントが見えてくるかと思います。
第2章では、コミュニケーション力を支える「話す」「聞く」指導のアイデアを書きました。コミュニケーション力の基礎的技能になりますので、指導のポイントと実際に使える指導アイデアを載せました。
第3章では、対話力を高めるためのコミュニケーション・トレーニングを書きました。 ICTの活用や協同学習、思考ツールの活用も取り入れました。
ぜひたくさんの皆さんに本書を手に取っていただき、コミュニケーションについての意見を交換することができたらと思います。