著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「先生がいなくても大丈夫」―子どもたち自身が、そう思えるように
京都教育大学附属桃山小学校若松 俊介
2021/6/11 掲載
 今回は、若松俊介先生に、新刊『教師のいらない学級のつくり方』について伺いました。

若松 俊介わかまつ しゅんすけ

 大阪教育大学小学校教員養成課程教育学コース卒業。大阪府の公立小学校で5年間勤務。現在、京都教育大学附属桃山小学校教諭。「国語教師竹の会」事務局。「授業力&学級づくり研究会」会員。「子どもが生きる」をテーマに研究、実践を積み重ねている。

―まずは、あえてお伺いしましょう。教師って、いらないんですか!?

 いいえ、教師は必要です。「教師のいらない学級のつくり方」というタイトルを読んで、「どういうこと?」と思われた方も多いと思います。これは、決して「学級に教師なんて必要ない」「子どもたちだけで過ごそう」ということではありません。
 「教師のいらない学級」とは、子どもたち自身が「先生がいなくても大丈夫」と感じられる学級のことです。教師に頼り切っていない状況だからこそ、自分たちで日々の学校生活をより良くしていくことができます。また、教師の手が離れても成長し続けることができるでしょう。
 そのためには、教師が子どもたち1人ひとりをじっくりと見て、適切な支援・指導をする必要があります。どんな場面でどのように教師が必要になるかをていねいに考えていくことが大切です。

―なるほど、「子どもが教師に頼り切っていない」というところが、1つのポイントなのですね。序章の部分を読んでいると、「教師がんばりすぎ問題」という言葉も出てきました。思わずドキッとするフレーズですが……具体的に、どのような状態になると、「がんばりすぎ」と言えるのでしょうか?

 これは、「全て教師がやらないと」と思い込み、あれもこれも手をかけ過ぎてしまうことです。子どもたちが自主的に動くことや成長することを阻害してしまう可能性があります。
 もちろん、子どもたちのためにがんばることが悪いことではありません。こうした前向きな思いが子どもたちの成長をより支えることにつながります。ただ、「こうしないと」「こう成長させないと」という思いが強くなり過ぎると、目の前の子どもたちの自然な成長を受け止めることができなくなってしまいます。
 もっと教師自身が肩の力を抜いて自然体でいられるといいなと思います。そうすることで、子どもたち1人ひとりの「今」をていねいに受け止めることができます。より良い支援・指導の方法も1人ひとりに合わせて見つけていくことができるでしょう。

―本書は、昨年刊行された『教師のいらない授業のつくり方』に続く2作目となります。前作と今作との違いは、どんなところでしょうか?

 前作は、「授業づくり」について、私が大切にしていることや考えていることを書きました。ただ、授業の場面だけで、子どもたちが仲間とつながりながら自分(たち)の力で深く学べるようにすることはできません。土台となる「学級づくり」をていねいに行うことが大切になります。
 そこで、今作では子どもとの関わりや学級づくりについて、私が大切にしていることや考えていることをくわしく書きました。「教師のいらない学級」へとシフトしていく過程を3ステップ、6段階に整理しています。今作だけを読んでも、参考にしていただけることは多くあると思いますが、前作と重ねることによってイメージしやすいと思います。

―各ステップの最後にはQ&Aコーナーも収録されています。先生ご自身も、SNSや研修講師等で、いろんな先生から質問を受ける機会がおありとのこと。例えば、どのような質問を受けることが多いのでしょうか?

 一番多い質問は、「子どもと接する上で大切にしていることは何ですか?」といった教師としての在り方に関するものです。普段、私が子どもたちとどのように関わっているかについて気になるようです。ご自身の考えと比べたり重ねたりされているのだろうなと思います。
 その上で、「ケンカをどう指導しますか」「学級目標をどうやって決めますか」など、その先生が日頃「どうすればいいか」と悩まれていることとつなげた具体的な質問を受けることが多いです。ただ、こうした質問に対して、私は「こうすべき」と答えることはできません。なぜなら、目の前にいる子どもたちが違うからです。子どもたち1人ひとりが違えば支援や指導の仕方が変わります。
 また、学級が変われば、学級づくりの仕方も変わります。今作も「こうすべき」「こうしたらよい」ということは書いていません。私が大切にしていることを書いています。皆さんの目の前の子どもたちの実態に応じて、声のかけ方、場のつくり方を参考にしていただければと思います。

―最後に。読者の先生方にぜひ一言、お願いいたします。

 「こうすればうまくいく」というものがないのが教師の仕事の魅力ですよね。私も日々、悩みながら子どもたちと共に毎日を過ごしています。読者の皆さんと共に、「目の前の子どもたちの成長をどのように支えていけばよいのか」を考えられればと思います。どうぞよろしくお願い致します。

(構成:大江)
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