著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
論理的で明確な答えを導き出す国語授業を目指そう
明星大学教授白石 範孝
2021/7/28 掲載

白石 範孝しらいし のりたか

1955年、鹿児島生まれ。東京都小学校教諭、筑波大学附属小学校教諭を経て、2016年4月より、明星大学客員教授、2017年4月より、常勤教授。「考える国語」研究会千尋の会会長、「考える国語」セミナー会長。

―本書で提案している「考える国語」の授業とはどのようなものなのでしょうか。そのコンセプトについて、簡単に教えてください。

 「考える国語」の授業では、「思考のズレ」から生まれる子ども自身の素直な「問い」「用語」「方法」「原理・原則」を手がかりとして論理的に「考える」という思考活動を行います。さらに、この思考活動によって、「問い」を明確に解決する「問題解決学習」を行っていく授業です。

―その「考える国語」の授業づくりのために、国語教師はどのようなことを心がける必要がありますか。

 問題解決学習のスタートとなる、教師が子どもに出す「課題」を教材の論理から設定することが重要です。その「課題」を見出すために次のようなことを重視します。

  • 教材の論理や仕組みをとらえるための「教材分析」
  • 作品や文章を丸ごととらえ、全体から細部への読み
  • 作品や文章を三部構成に分けて読み、因果関係や文章全体の構成をおさえた読み
―1章では、問題解決学習で活用できる技として「用語」「方法」「原理・原則」が紹介されています。こちらはどのようなものなのでしょうか。詳しくは本書で…と思いますが、少しだけご紹介ください。

 国語にも「中心人物」「クライマックス」「要点」「要約」「要旨」等の国語における「用語」が様々ありますが、これらの用語の解釈は人によって違います。解釈が違うので答えも曖昧にされてしまうのです。国語における「方法」も同じことが言えます。このような「用語」「方法」を明確に論理立てているのが「原理・原則」なのです。
 たとえば「要点をまとめなさい。」という課題に対して、「要点とは何か?」「どのようにまとめるのか?」「どんなきまり(原理・原則)があるのか?」が分かっていなければ要点をまとめることはできず、曖昧にすることになってしまいます。国語における「用語」には、「原理・原則」があり、それを求める「方法」があるのです。これを基に論理的に考える必要があるのです。

―2・3章では76の授業事例について各教材の特性、構造図とともに指導の流れの具体が紹介されています。あらゆる教材から子どもたちの「思考のズレ」を引き出すポイントを教えてください。

 「思考のズレ」を生じさせるためには、単元の最初の段階で出す教師の「課題」が重要な働きをします。この課題は、単なるイメージや感想だけを求めるものではありません。次のような子ども自身の素直な思いを表現させるものです。

  • 課題に対して持つ素直な考えを表出させます。
  • 完璧な考えを求めず、途中までしか分からなくてもいいことを大切にします。
  • 課題に対して「わからない」という思いを大切にし、何が分からないのかを明確にします。

―最後に全国の小学校で国語を教える先生方に一言メッセージをお願いします。

 国語の授業は、イメージや思いが重視され、明確な答えは示されず、何でも曖昧にされ、何を学んだのか分からないことが多いです。これからの国語の授業は論理的で明確な答えを導き出す授業を目指さなければなりません。そのために、次のようなことを日々心がけていくことが重要だと思います。

  • 「教材を教える」授業から「教材で教える」授業づくりを目指す。
  • 普段使っている「用語」の意味、きまりを見つめ直す。
  • 教材の論理をとらえるための「教材分析」を重視する。
  • 教材を丸ごととらえた読みをする。
  • どんな「問い」にも明確な答えを示す。

 以上のことを大切にして、子どもたちに本当の国語の力を付けていく授業を目指していきましょう。

(構成:木山)
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