- 著者インタビュー
- 特別支援教育
そうです。中学部の先生たちと学部研究として取り組んでいた、主体的な活動参加と仲間関係を育む「グッドポイント・グリーンポイント」の実践がもとになっています。
子どもたちが、仲間とのあたたかな関係の中で自ら活動に参加すること、さらに自分の興味関心を深め広げることを目指し、授業づくりとその中での様々な仕掛けを考えました。「見えるほめ方」はそのうちの一つです。
ほめることは大切ですが、それが子どもの育ちにつながるためには、その「ほめ」が子どもにとって好ましいものであることが前提です。グッド・グリーンポイントは、子どもたちにも先生たちにもわかりやすく、互いに楽しみながら取り組める仕組みでした。
人の行動の理由は、本人とそれを取り巻く環境(行動の前後の事象)にあります。これは応用行動分析学に基づく考え方です。さらに、その考え方を適用して前向きな支援を考えるポジティブ行動支援(PBS)という枠組みがあります。これらをもとに、実践をしています。
行動のきっかけ→ 行動 →うれしい
この「きっかけ」と「うれしい」のセットが、行動が増える理由です。つまり…
子どものすてきな行動を増やすためには、子どもにとってうれしい「ほめ方」と「ほめチャンス」を。先生たちが子どもをほめる行動を増やすためには、先生たちにとってもうれしい「結果」と「ほめ行動のきっかけ」を。これがポイントです。
応用行動分析学は、本人と周りを取り巻く人々の生活を豊かにするための、とても優しい学問です。
本書では大きく触れていませんが、特別支援の現場では本人や他人にとって危険を及ぼす、行動上の問題を起こす子どもも少なくありません。「すてきなところを見つけてほめよう」と思っても、くじけてしまいそうになります。
それでも、基本的には一緒なのです。望ましくない行動の「きっかけ」と「うれしい」をなくし、その代わりのすてきな行動の「きっかけ」と「うれしい」を設定します。
もしも友達に対する望ましくない行動が起こっているのならば、思い切って「きっかけ」への対応を変え、集団と切り分けた学習場面をつくります。その行動が一切起こらないように設定した場所で、望ましい行動を個別にたくさん学習してから、改めて集団に参加することは有効な方法だと考えています。
もちろんほめる以外にも大事なことはたくさんあると思いますが、9割の「ほめる」は子どものすてきな行動が見られた時に「いいね!」と言葉かけをすることだけではありません。
例えば、すてきな行動を起こすためのきっかけをつくること、場合によっては、その行動の仕方を教えること、そして子どもにとってうれしい「ほめ」を見つけて、その方法でほめることなど。子どもをほめるためには、やることがたくさんあります。
でもそれってよく考えると、「授業」だったり、「個別の指導計画」だったりしますよね。
子どもが「できた!」「やりたい!」「好き!」と言ってくれる授業って何だろう、支援の手立てをこうしたら「できた」につながるかな、そんな当たり前だけど大切なことを日々考えています。
毎日やることがたくさんある中で、一人一人の子どもの姿を丁寧に見ていくのって、大切だけれど難しいですよね。
「ほめて伸ばす」の極意は「子どもの好きなもの探し」だと思っています。食べ物、乗り物、音楽、ぶるぶる震えるおもちゃ、キラキラのライト、先生の笑顔…。いろいろな体験を子どもと一緒にして、なるべくたくさん見つけて増やしていきたいです。
そのために、一緒に取り組む「仲間」をつくっていきましょう。同僚の先生たちだけでなく、保護者さん、職場外の先生たち、先生以外の人たち、…仲間候補はたくさんいます。理論や理屈はとりあえず置いといて、「○○さんの好きなもの探しチーム」もよいかもしれません。
まずは先生が元気にポジティブに、毎日を楽しめますように!