- 著者インタビュー
- 保健・体育
前作は、授業マネジメントを中心に1年間の指導計画と簡単な実践紹介をしたものでした。今回は、実践紹介の部分に焦点を絞り、これからさまざまな運動教材と向き合える基礎感覚づくりを養うための体育授業のポイントを解説入りでまとめました。
また、教材紹介の最後にQ&A「こんな場合、どうする?」を書いています。これは、私自身が授業を行う際に困ったことや事前に想定できることをまとめました。このことで、先生方も授業を行う前に学級の現状に照らし合わせて、単元の始まる前の授業計画に役立ててほしいと思っています。
最後に、本書は見開き2ページで1教材を提示しています。6領域・67の活動を書きました。ポイントを絞っていますので先生方の教える子ども達の現状を踏まえ、アレンジをしていただけると幸いです。
私が初任の時に、筑波大学附属小学校の夏期研修会に参加した時にリズム太鼓を使っている様子を見て、すぐに太鼓の名前を先生方に伺い購入した覚えがあります。
リズム太鼓を選んだ理由は、さまざまな音を出すことができるからです。「うさぎとび」や「かえるとび」の時に、手の場合は「トン」と太鼓の真ん中をたたき、足の場合は「カン」と太鼓のふちをたたくことで音を変え、言葉で指示するのではなく、この音で手と足を着くタイミングを覚えさせることが可能になります。特に1年生の運動にはリズム感が大切ですので、とても効果的です。ただ、太鼓の音が苦手な子もいますので、笛と同様に大きな音を出すことや太鼓を使いすぎることには注意を払います。
次に口伴奏を取り入れると、運動の手順やポイントを唱えることで、「みんなで」できることが多くなります。1年生の体育授業で細かい説明の時間はできる限り取りたくありません。そこで、口伴奏を取り入れ、同じ動きをすることで、指導者である私たちも見る視点が定まり、より具体的な指導が可能になります。また、全員で唱えながら、みんなで取り組む一体感と活気ある雰囲気が生まれるのです。
1年生が俯瞰できるようになることは難しいことです。しかし、1年生の子ども達にもできること(俯瞰できる目や態度を養うこと)はあります。そのポイントは2つあります。
1つ目は、仲間の運動の様子(姿)をよく見ることです。仲間の動きをよく見ることで、自分の動きと重ね合わせ、自分の運動の参考とすることができます。また、友だちの動きを見ることで「回数が増えたよ!」「腕が伸びていたよ!」と自然と技能ポイントを自分の言葉で表現することにも繋げられます。これから6年間共にする仲間と高め合える土台づくりが、1年生の授業では大切になります。
具体的な声かけ例は以下になります。
「友だちのことをよく見てくれたね!」
「今の声かけすごくよかったよ!ありがとう!」
「あなたがお手伝いしてくれたから安心したんだよ!」
私たちの承認(認める)言葉を耳にすることで、子ども達自身も認める言葉を発するようになります。
2つ目は、頑張っている仲間(友だち)や、一生懸命取り組んでいる仲間(友だち)を応援することを価値づけることです。応援をすることで「心」を育みます。応援の際に回数を数えるだけでも、「できた」ときに喜びを共有できるからです。認め合う関係づくりを大切にしていきます。
具体的な声かけ例には以下のようなものがあります。
「応援の声が素晴らしい!」
「一緒に喜んでくれる仲間っていいね!」
「今のアドバイスはとてもよかったよ!何て言ったの?(問い返し全体へ共有します)」
応援の質(内容)も回数を積み重ねていくうちに向上していきます。その点もしっかり認めてあげることも大切です。
この2点とも、学習の1つとして子ども達へフィードバックすることを心がけています。
一言で言えば「安心感」を大切にしています。運動が苦手な子にとっては、安心して授業にのぞめることが最優先事項だと思います。私の考える「安心感」にはいくつかあり、
・「この運動はできるかも」という安心感。
・「怖さや痛さ」のない安心感。
・「共に活動を支えてくれる仲間がいる」安心感。
などが挙げられます。
そして、効果的な授業を進めるには、「学級づくり」がとても重要です。子ども達との関係性をどのように創り上げていくか、どんな子ども達を育てていきたいかを明確にもって、共に学びを深めていくことを心がけています。特に1年生だから「これは無理だろう」と決めつけずに、「できる」へ向かえるさまざまな配慮や工夫をして授業を行い、前向きな気持ちづくりと安心して取り組める環境を整えることを大切にしています。
1年生との授業はものすごく楽しいです。その理由は、教えたことがどんどんできるようになり、「できたよ!見て!見て!」と自分でできたことを共に喜べる機会が多くあるからです。また、先生方自身が体育授業を楽しむことで、さらにその楽しさが増していきます。「子どもたちの喜びにつながる学習活動(取り組み)」へ向けて、そのために教材をより深く知る(授業者が楽しさを知る)ことが大切かと思います。本書がその一助となればと思っています。
共にがんばりましょう!