- 著者インタビュー
- 道徳
「考え、議論する」と言いながら、真の議論になっていないように感じています。それは、やはり、先生方が正しい意見、まっとうな意見を心の中では求め、それを子供たちが感じて答える形になっているからだと思います。逆説的に言えば、そういう「当たり前の意見」を言わないような授業をつくることが議論のスタートになると考えています。
5つの型は「わかりきったこと」を先生方が感じやすいようにと、子供たちの思考パターンから割り出したものです。この5つの型と授業モデルを照らし合わせることにより、どういう問いが「わかりきった」発問、あるいは「子供たちにとって切実な」思いから生じた発問かを見分けられるようになります。もし本書で取り上げた教材で授業することがあればモデル通りやってみてください。その上で、授業モデルの発問を参考にご自分なりの「ザワつく」授業にしていただければと思います。
例えば、「自然愛護」をテーマにした授業では、何も工夫しなければ子供たちからは「自然は大切」「守らなければ」というような建前を前提とした意見ばかりが出されます。「みんなはできているの?」と問うても、子供たちからは、「大人が自然を壊している」「地球温暖化と言いながら二酸化炭素を出し続けている」ことが指摘されます。そこで、「将来を生きるのはみんななのだ。このままで大丈夫だと思う?」と言うことでやっと本気の話し合いが始まります。「自分たちの未来」を想定させることが「問題の本質」に迫ることになるのです。
従来の授業では、導入に必要以上に時間をかけることが多く見られました。本時の内容項目についての子供たちの事前の受け止め方を探り、教材の理解を丁寧にすることで子供たちがより考えるようなると信じてやってこられたのだと思います。でも、内容項目の捉え方の把握や教材の理解は、教材の中心部分に「いきなり」ズバッと切り込むことで、十分に捉えたり子供たちが理解することができますし、余計な先入観を持たずに話し合いに臨むこともできるのです。何より考え議論する時間の確保が重要なのです。
教科の授業は数時間1単元の構成となっており、1単元を通じて子供たちのよい表れを求めることはなかなか難しいものです。しかし、道徳授業は1時間で完結します。子供たちにとっても教師にとっても、1時間に全力を傾けることで、自信を持つことをしやすい教科なのです。授業が変わることは子供にとっても教師にとっても大きなことですが、ぜひ「ザワつく道徳授業」を実践して、授業はうまくいくものだという実感を体験してみてください。それであなたの授業が変わります!!