- きょういくじん会議
26日の時事通信社の記事によると、奈良県明日香村の高松塚古墳で、最後に残っていた「男子群像が描かれた東壁石」が修繕の為とりはずされ、古墳近くの修理施設に搬入された。これで全ての国宝壁画がとりはずされたことになり、文化庁では専門家により修理や保存処理の方策を検討し、来年から本格的な処置に取り組む方針。
私たちの中には「文化財」は永遠にそのままの形で残るもの、という安易なイメージがややあるように感じる。しかし実際にはそのままの形で残すために専門家による「修復・維持」の作業が行われている。
作業には主に「現状維持」とその当時の姿に戻す「現状復元」があり、当時どのようになっていたかを分析・類推し、時代考証などを経て復元する作業は大変時間・手間のかかるもの。それだけ、貴重な文化財を守ることは価値があるとも言えるだろう。
近年では「源氏物語絵巻」が当時の姿に近い形で再現され、話題を呼んだ。今のように機械がない時代でもあり、当時の作業の細かさ・量は私たちの想像を超えるものだ。そうした当時の文化・美しさに触れることは、今ある伝統・文化を大切にする意識を高める意味でも、とても価値のあることではないだろうか。
先日、在外公館に飾られていた絵画や陶磁器などの美術品のうち、02年以降に45点が廃棄され、絵画1点を紛失していた―という記事が朝日新聞に掲載された。寄贈した作家・作家の遺族の方々は憤慨しているとのことだが、こういうニュースを聞くと残念でならない。今回の壁画に比べて「修理に値しない」ということでもないだろうが、「文化を広めるために」と善意で寄贈してもらったものを「劣化してしまったので」と廃棄、というのはあまりにも―。
以前、修繕の仕事をされている方からうかがった「私たちは一時的な延命をしているにすぎません。本当に大切なのは、皆さん一人一人の文化を守る意識です」という言葉が、頭から離れない。
