きょういくじん会議
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No Child Left Behind ―改善に向けて一歩前進(米国)
kyoikujin
2007/12/12 掲載

 2002年から施行された米国の“No Child Left Behind”。通称NCLBでは、子どもたちの学力を調査するため、全国規模のテストが実施されている。12月7日のED.govプレスリリースによると、現在テスト結果の分析に使われているグループ評価とは異なる、個人内評価に重点を置いた新しい学力の評価方法“growth model”を試験的に取り入れる州を米政府が募集するそうだ。

 NCLBの課題の一つには、評価の対象が学校や学区を単位としてグループ化された子どもたちの平均学力となっていることがある。現場からは、グループの平均が基準を超えても、実際はすべての子どもがその学力基準に到達できているという証拠にはならない、といった疑問の声も上がっている。
 これに対して、一人一人の子どもの学力の変化を評価の対象とする“growth model”が取り入れられれば、個人の学力の変化を長期的に記録して評価することができ、すべての子どもの学力を保証することにつながるのではないかと期待される。

 また現状では、もともと学力の低い子どもが多く、多大な努力によって基準点近くまで平均学力を伸ばしてきた学校よりも、そこまでの努力をせずに基準の点数を超えた学校の方が評価されやすい傾向がある。この場合も、“growth model”を採用すれば、基準を超えられなくても子ども一人一人の学力が向上していることがわかり、学校や学区の努力を正確に評価できる可能性がある。

 “growth model”の試験的な実施を希望する州は、2008年2月までに、決められた条件を盛り込んだ新しい評価の実施計画を提出することになっている。審査結果は同年5月に発表される予定だ。すでに9つの州で試行され、様々な成果も出ている。今回、より多くの州の参加を募っている背景には、ひとつでも多くの実践例からその効果を見極めようとする慎重な姿勢と期待感もあるようだ。

 将来的に全米で“growth model”が取り入れられれば、これまでよりも正確に子ども一人一人の1年ごとの学力の伸びを把握することができるようになるとともに、学校や教師側の努力の効果をより正確に評価することにつながることが期待される。2月までにどれだけの州が参加の意思を表明するのか、今後の動きに注目したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2007/12/14 12:59:44
    グループの平均学力から個々の学力を測るってことは、
    それだけの労力を上乗せしなければならないのでしょうね。
    理想的ではありますが、ハードルが沢山ありますね。
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