教科書で1度は見たことがある作品―高村光雲「老猿」
2007/12/16 掲載
- きょういくじん会議
高村光雲の彫刻「老猿」(重要文化財)。突然だが、あれがどのくらいのサイズかをご存知だろうか。私は、てっきり両手で持てる置物程度の大きさだと思っていた。ところが実際は、90.9センチもある。大人の腰高より充分に上までくる大きさだ。
教科書で見たことがあり誰もが知っている美術品というのは結構あると思うが、この「老猿」もその1つに入るだろう。
メジャーなものとしてはゴッホの「ひまわり」やピカソの「ゲルニカ」、インパクトのあったものとしては、岸田劉生の「麗子像」などもあがるかもしれない。美術の教科書に限らなければ、口から仏様が列をなしている「空也上人」などもかなり印象に残っている人が多いのでは…
名前と作者は忘れてしまっても、写真を見れば「あぁ、それ見たことある。」となる訳だが、しかしそれらの実物に、実際お目にかかることはなかなかない。
実際「老猿」を見ると、まずはその大きさに驚き、次に、左手に何か羽のようなものを持っていることに気がつく。これは鷲の羽であり、格闘の末、取り逃がした鷲の飛び去った方向をにらみつけているという瞬間なのだ。ただ、この作品はシカゴ万国博覧会(1893年)に出品されており、単に猿の描写をしているだけではなく、ロシア王家の紋章が鷲であるという背景も含め、明治の日本の気概を世界に示しているとも言われている。
やはり実物を見ると、写真だけでは伝えきれないものが山ほどあることに改めて気づく。もうすぐ冬休み。是非、何か1つ本物を見に行く機会をつくってはどうだろうか。
現在、東京国立近代美術館で開催されている「日本彫刻の近代」で、「老猿」は展示されている。会期は24日まで。
この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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