きょういくじん会議
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増加するアタマジラミといじめに注意―耐性を持った種類も
kyoikujin
2008/3/26 掲載

 みなさんはアタマジラミと聞いてどのような印象を持ちますか? 「ずっと昔に流行したもの」「不潔な子どもに感染するもの」といった印象を持つ方もいるのではないでしょうか? しかし、どちらの認識も誤ったものなのです。アタマジラミは、清潔・不潔に関わりなく、子どもたちの間に広まっているようです。

アタマジラミ3度目の流行―親の無理解、耐性種の出現が原因?

 戦後にほぼ絶滅したと思われていたアタマジラミですが、70年代にDDT等の殺虫剤が使用禁止になったことで再興、1981年の「スミスリンパウダー」の開発により再沈静化という歴史をたどってきました。しかし、10年ほど前から再び流行し始め、各地の保健所への相談件数も増加しています。朝日新聞の報道によれば、東京都における平成18年度の相談件数が1125件となり前年比は約5割増しに、大阪では幼小合計で1429件となり、4年前と比べると3倍に増えました。
 流行の原因は、特定されてはいませんが、シラミを知らない世代が親になり、シラミへの理解が足りていないことなどが指摘されています。また、現在日本で認められている唯一の駆除薬である「スミスリン」に対して耐性を持った種類も確認されており、絶対数の少なさから主力となるまでには至っていないものの、その存在が懸念されています。

「シラミが不潔」は誤認識―差別による2次被害も

 アタマジラミは感染症を媒介することはありませんが、頭皮がかゆくなり、かきすぎることで感染症などを引き起こす可能性があります。子どもたちに感染が多いのは、遊びの中での接触や昼寝など、頭を寄せ合う機会が大人よりも多いからで、特に頭を自分ではきちんと洗えない低・中学年児童までに多く発症するとされています。
 また、不潔だから発症するという認識は誤ったもので、毎日シャンプーをしていても、接触してしまえば誰にでもふつうに感染するものです。シラミ=不潔という認識があることから、シラミそのものの被害よりも、差別やいじめによって受ける精神的ダメージが懸念されており、いちはやく対策を行った豊島区保健所のアタマジラミ対応マニュアル(PDF)では、先生や保護者がシラミについて正しい認識を持ち、落ち着いて対処するように呼びかけています。

 適切な認識を持たない保護者は「シラミの子と遊んではいけない」などと考えることも多く、子どもの心に傷を残したり、親同士の関係にトラブルを起こす原因となります。また、学校や幼稚園できちんと対策を取れば、発症した子に対して隔離などの特別な扱いをする必要もなく、他の子どもやその親たちに知られずに治療することは可能です。子どもに差別観を与えないためにも、親や教師を含む大人がシラミに対する正しい知識と処置方法を学んでいく必要がありそうです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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