- きょういくじん会議
「国語に関する学術研究の推進に関する委員会」がこのほど、「国語に関する学術研究の推進について」報告(案)(PDF)をとりまとめた。国語が置かれている現状と課題が端的にまとめられた同報告案、教育界には関係してくるのだろうか。
同委員会は文科省の学術分科会学術研究推進部会のもとに、本年1月設置されたばかり。文科省ホームページを見ると、4〜5回の審議を経てこの報告案がまとめられたようだ。
平成16年の国語力に関する文化審議会答申以後、教育行政においても国語・言語の教育についてその重要性を前面に押し出した方針が何度か出されている。今回の報告案は教育、特に国語科教育においてどのような意味を持ってくるのだろうか。
国語科教育に関連しそうな重点研究分野
- 言語資源としてのコーパスの構築
- 収集した言語資源による文法・語彙等の理論研究
- 国語の特質と普遍性を明らかにするための国際的な研究協力・他言語との対象研究
主な研究体制
- 国立国語研究所を改組・転換した「大学共同利用機関」の設置
- 全国の大学の研究者や研究組織間とのネットワーク整備
- 情報工学・認知科学等との積極的な連携
- 外国人研究者や海外の日本語研究者との積極的な連携
国語科教育行政への展望
理科教育などもそうだと言われるが、「現在の国語に関する知見」に基づいて国語科教育が行われるため、近い将来、上記のような研究分野において新たな知見が生まれれば、国語科教育の指導内容も変わってくる可能性がある。
しかし、一方では国語科教育の問題点として、「現在の国語に関する知見」にすら基づいていないのではないか、と言われることも多い。
その例としては、文法指導、古典指導など、今次改訂で国語科の目玉になっている「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」に関わるものが挙げられる。文法でいえば、有名な「象は鼻が長い」など、「主語」一つとってもはっきり区別しにくいと言われているのに、学校では平然と「主語」を教えている現状がある。
今回の「国語に関する学術研究」が充実することは重要で歓迎すべきことだが、従来の国立国語研究所の役割とさして変わらない。同報告案の「1.はじめに」で述べられているように、国語の重要性・社会全体で国語力を身につけていくことの必要性を重視するのであれば、国語科教育との連携は避けて通れないはずだ。
国語科教育界への提言を視野に入れた学術研究と同時に、教育行政側・国語科教育界側からの積極的なアプローチも必要になってくるだろう。