- きょういくじん会議
日本のリゾートの代名詞ともいえる沖縄県。その中心となる沖縄本島から更に約350キロ南西に、八重山諸島のひとつ、竹富島があります。島の周囲は9.2キロ、人口は340人余り。病院もなければ警察もなく、スーパーやコンビニもありません。けれど、そんな小さな島にも、美しい海と自然に囲まれた子どもたちの学び舎があるのです。
真っ白な砂を敷き詰めた道、珊瑚の石垣、赤瓦葺きの民家、咲き乱れる南国の花々…。沖縄の伝統的な景観を色濃く残す竹富島の集落のほぼ真ん中に、竹富小中学校は位置しています。近年は教育の観点から公立の小中一貫校というものが徐々に設立されていますが、人口の少ない竹富島の場合は他の多くの離島と同じく、生徒数が少ないための一貫教育です。
全校生徒は合わせて30数名。都心の学校であれば1クラス分という非常に小さな規模にも関わらず、竹富小中学校はさまざまな分野での学校活動が認められ、数々の賞を受けています。
9年連続で入賞という素晴らしい実績を出しているのがソニー子ども科学教育プログラム。ソニー教育財団が科学好きな子どもを育成することを目的に、優れた取り組みを実践している学校を表彰、助成するシステムです。このソニー賞はハードルが高いことで知られており、同校の連続受賞には観光で訪れる県外の教師らからも驚きの声がよく聞かれるそう。
そして2005年度には、児童生徒の創意・工夫の育成に顕著な成果をあげたということで文部科学大臣賞を受賞しています。竹富島の特色を活かした学校教育を通して、島の歴史や文化、自然を教えていることが評価されての受賞とのこと。この小さな島からの大きな受賞は、島全体がそのニュースに沸いたとか。
この背景には先生方をはじめ、島民が一丸となって子どもたちを育てている土壌があります。例えば「最近は三線を弾ける生徒がいない」と言えばすぐに「三線教室」が開かれ、「太鼓を作りたい」と言えば、樹木の選定から彫り方などを熱心に教えてくれ、「西表島調査に行きたい」と言えば自分の船を出して連れて行ってくれる近所の人々。他にも、子どもたちに島の食材を使った伝統料理を教えたり、竹富島の重要無形民俗文化財「種取祭」について学んだり、「テードゥンムニ(竹富方言)大会」ではお年寄りから学んだ方言を使って意見発表をしたりもするそう。
このような絶大な協力があるからこそ、この学校は成り立っています。竹富小中学校のホームページを覗くと、目指す学校像という項目にうつぐみの心という竹富の言葉が載っています。これは「お互いを助け合う」という意味で、これこそが竹富の基本精神だそうです。うつぐみの心を大切にする土地柄が、島の宝である子どもたちを島全体で教育し、文化を伝承していくことにつながっています。卒業式や運動会などの学校行事には、島民の半数以上が参加するとか。学校の行事は島にとっても大切な行事なんですね。
素晴らしい地域文化が根付いている竹富島。それを継承しながら皆に見守られてのびのびと教育を受けられる子どもたち。竹富島を愛する一観光者としては、島の行く末を担う子どもたちの健やかな成長を願ってやみません。
- 竹富町観光協会ホームページ
http://www.painusima.com/ - ソニー科学教育プログラム、9年連続入賞を報告(八重山毎日新聞)
http://www.y-mainichi.co.jp/news/10452/ - ミニ校豊かな教材 竹富小中に文科大臣賞(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-1569-storytopic-1.html