きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
合唱パワーに注目! 歌でまちづくり・仲間づくりをしよう
kyoikujin
2008/5/30 掲載
うた魂♪ (朝日文庫 し 37-1)

 舞台は北海道の高校合唱部。自分の歌声に陶酔し、歌っている自分の姿にもうっとりしてしまうような合唱大好きの主人公かすみが、憧れの生徒会長に、歌っている時の顔の写真を撮られ、「産卵中の鮭みたい」と言われて自信喪失。そんなある日、合唱祭でやる気なく歌うかすみの姿を見かけたヤンキー高校の合唱部から渇が入った…

 以上は、4月から公開されている映画『うた魂♪(うたたま)』のあらすじ。合唱は、音楽の授業で必ずやる活動だが、なぜか地味なイメージを持っている人が多い。この映画はそれを払拭し、「カッコイイ」合唱をみせつけるような青春ストーリーだ。ただそこにはカッコイイだけでなく、体操部顔負けで一丸となって行う体づくりのトレーニングや、1つの曲をつくるために全員が協力し合う姿など、合唱だからこそ育つ仲間意識の存在に改めて気づかせてくれる。

 これは映画のお話だが、今日は、実際合唱が人と人をつなぐ上で一役かっているという話を2つご紹介しよう。

「合唱王国」―福島県郡山市

 福島県郡山市は県全体で合唱熱が高く、「まちづくりに合唱はかかせない」として取り組んでいる。学校の合唱部も盛んで、県立安積黎明高校は全日本合唱コンクール全国大会で28年連続の金賞、郡山第二中学校も5年連続日本一という輝かしい経歴だ。
 郡山はかつて工業都市として発達し、人口が急増して様々な人が集まった結果、「暴力団抗争がたえない治安の悪いまち」という悪いイメージを持っていた時期があった。そんな地域に住む郡山市民の心の拠り所になったのが、音楽の存在である。著名団体の公演や世界的な音楽会を積極的に開催したり、戦後は毎月第3金曜日をコーラスの日として街頭コーラスをするなどの活動で、「暴力」から「音楽」のまちへと生まれ変わった姿は映画にもなった。そんな市民の音楽への思いに行政も支援をするかたちで、3月には郡山市が「音楽都市宣言」をし、先日24日にはその式典が開かれている。

美しい歌声と思いやりの心が溶け合う学校―山形県陵東中学校

 長年(30年の歴史がある)、合唱を通じて学校づくりをしている中学校がある。山形県寒河江市の陵東中学校だ。こちらは、部活動としてではなく、学校全体が合唱活動に取り組むというもの。合唱部はなく、生徒会合唱委員会が中心となって日頃から取り組んでいる。
 陵東中学の合唱活動の伝統は古く、毎年、修学旅行では上野公園で公演を行っていることは知る人ぞ知る情報。それが今年は、「中学生活の思い出として舞台で公演したい」という話に盛り上がり、370人を収容する都内のホールを貸し切っての公演が実現した。4月に行われた公演は大盛況で、生徒達も大勢の観客の前で自分達の歌声が披露でき、一生の思い出となったようだ。
 「日常生活の中で行っている合唱活動を通して、生徒の心が一つになっていく。そうした中で仲間づくりや励ましたり・伝え合う心が育まれている」と遠藤康男校長は言う。

 映画のラストは、合唱コンクールの地区予選。かすみの所属する学校のアンコールでの歌声に、客席も感動してみんなが総立ちで歌いだす。やはり全員で一斉に声を出して1つの曲を作り上げる合唱は、人と人とをつなげる大きな力があるようだ。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。