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体験活動「トライやる・ウィーク」開始から10年―兵庫県
kyoikujin
2008/7/2 掲載
トライやる・ウィーク ひょうご発・中学生の地域体験活動

 兵庫県で公立中学校2年生全員を対象に行われている1週間の体験活動「トライやる・ウィーク」が開始されて10年がたちました。「心の教育」として始まったこの取り組みの体験者は、現在50万人を超えているといいます。この10年でどのような成果をあげてきたのでしょうか。兵庫県教育委員会がまとめた「トライやる・ウィーク」10年目の検証(報告)(PDF)より、その様子をご紹介します。

「トライやる・ウィーク」実施の背景

 「トライやる・ウィーク」は、1995年の阪神・淡路大震災、1997年の神戸連続児童殺傷事件をきっかけとして、「心の教育」の重要性が指摘されるようになる中、体験活動を通じて子どもたちが自分なりの生き方を見つけられるよう地域社会全体で支援していこうとして始まりました。

平成19年度の実施状況

 活動分野は事業所などでの職場体験(82.7%)が多くを占めますが、他にもボランティア・福祉体験(6.6%)、文化・芸術創作体験活動(5.0%)など多岐にわたっています。中には、灘の酒造り、播州素麺づくり、但馬牛の飼育活動など、地域に根ざした産業を体験する生徒もいるようです。
 また、特別支援学校にも取り組みが広がっています。平成16年度からは県内の17の市立特別支援学校で実施されていますが、円滑に実施されるよう、活動場所や内容の選定には個々に応じた対応がなされるとともに、活動には指導ボランティアが0.7名につき1名、介助補助員が1.4名につき1名(平成19年度)がつくなど、きめ細かい対応がなされています。

体験した生徒への影響

 体験した生徒に行ったアンケート調査では、約8割が「自信がついた」、「自分で決めたことに責任を持つようになった」と回答する結果に。また、約7割が「将来の職業について考えるようになった」「進路について考えるようになった」と回答しています。1週間という短い期間ではありますが、生徒達にとっては、自分自身の成長を実感したり、将来について考える契機となったりと、貴重な体験となっているようです。
 また、1期生(平成10年度)を対象に行った調査では「トライやる・ウィーク」の体験がその後の進路にも影響を与えているということが明らかになりました。

不登校生徒への効果

 報告書では、「トライやる・ウィーク」は不登校傾向の生徒にとっても、自信を持ったり、人間関係が変化する機会となっていることも指摘されています。
 不登校生徒で全日程に参加した生徒の割合は、この10年の間、毎年4割を超えており、そのうちの3割〜4割の生徒が、実施前に比べて登校率が上昇しています。すべての不登校生徒に影響があったわけではないものの、登校へのきっかけとなるケースもあるようです。

効果は学校・地域にも

 影響を受けているのは生徒ばかりではありません。教職員の7割超が「これまで学校生活で見られなかった生徒の新たな側面などの発見があった」と回答しているほか、約8割が「学校と地域社会との関係にとって有意義な活動であった」と回答しています。
 また、体験活動の受け入れ先となる地域の大人たちにとっても、子どもと直接関わることで、地域全体として子どもたちの育成に携わっていこうという意識を高める効果があるようです。

 ちなみに、「トライやる・ウィーク」という名前には、挑戦(トライ)という意味と、もう一つ、学校・家庭・地域の三者(トライアングル)という意味が込められているのだとか。
 受け入れ先の確保や事前・事後指導の充実など課題も多いようですが、今後も学校・家庭・地域が一体となって子どもたちの「心の教育」に携わっていくことが期待されます。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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