- きょういくじん会議
14日、文科省より「中学校学習指導要領解説」が公表された。「音楽科」(ZIP)の注目点としては、次の3点が挙げられるだろう。
- 伝統音楽の更なる充実
- 歌唱共通教材の復活
- 共通事項の新設
1.伝統音楽の更なる充実
改訂指導要領が公表され、歌唱教材の中に「民謡、長唄」が記述されているのを見て「さぁ、よわった」と感じた先生も多いかもしれない。前回の改訂で、和楽器が導入された際の現場の動揺がよみがえる。
さてこの部分、「解説」ではどのように書かれているか。目に付くのは「地域や学校、生徒の実態を考慮して」という言葉。2度記載するほどの強調ぶりだ。前回和楽器を導入したことで伝統音楽の取り組みの重要性が認識され始め、今後もさらに重視する方向性がよく分かる一方で、指導者の育成が追いついていないことへの配慮が表れている。「解説」ではさらにこう記載されている。「視聴覚機器などを有効に活用したり、地域の指導者や演奏家とのティーム・ティーチングを行ったりすることも考えられる。」伝統と文化の尊重は、総則に記載されているように全教科に共通した課題であり、音楽科が果たす役割も大きい。
前回の改訂から10年たって、果たしてどれだけの学校が実際伝統音楽に取り組んでいるか、というのが現在の率直な疑問。今後、指導者の養成にもっと力を入れていかなければいけないのは明確だ。
2.歌唱共通教材の復活
「復活」というのは、つまり前回の改訂で削除された歌唱共通教材が、今回の改訂で再び示されるようになった、ということ。前々回の指導要領では学年ごとに示されていたものが、今回は一覧として記載され、「各学年において1曲以上取り扱うこと」として示されている。曲目は次の7曲。全てが日本の歌曲だ。
赤とんぼ、荒城の月、早春賦、夏の思い出、花、花の街、浜辺の歌
「解説」でこれらの曲は、「日本情緒」「人の世の栄枯盛衰」「春を待ちわびる気持ち」「静寂な尾瀬沼の風物への追憶」等々と紹介されている。日本人ならではの感性でつくられた曲を歌唱することで、その情景や情緒を感じる心を現代の子どもたちに育みたい、という意図だろう。
実は現行指導要領の今でも、これらの曲は教科書に入っている。しかし指導要領へ再び明記されたことで、総則で度々でてくる「我が国と郷土を愛し…」に対して、音楽科の重要性を再認識しているように感じる。
3.[共通事項]の新設
これは今回の改訂で音楽科の目玉と言ってよいだろう。学力重視傾向の中で芸術科目である音楽科が存続するためには、「身に付く力の明確化」が必要と言われてきている。確かに、「鑑賞」1つをとっても、単に曲を聴いてどう感じたかみんなで話して終わり、では個人の価値観レベルの話だ。この曲では何を聴き取らなければならないのか、ということを子ども達自身が分かるような指導をしなければならない。また、そこで聴き取ったことが音楽のどんな要素であり、その理解をどう表現の活動で生かしていけるか、とつなげることによって、「表現」や「鑑賞」が切り離された存在ではなくなる。
但し、単に音楽の要素の聴き取りや音楽知識の習得ができればクリア、というのでは音楽本来の目的―音楽って楽しい。音楽が好きだな。と感じる子どもを育てること―が損なわれてしまう。音楽は「感性」を育てる教科として、現代の子どもにこそ非常に重要な教科。だからこそ実際体験を伴って、知識を理解・納得し、「音学」でも「音が苦」でもない「音楽」の授業が増えていってほしい。
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