きょういくじん会議
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何歳まで子ども? 成人年齢引き下げ議論
kyoikujin
2008/10/3 掲載
Q&A解説・憲法改正国民投票法

 このごろ、成人年齢引き下げについて議論されています。つい先日も、塩谷立文部科学相が9月25日の記者会見で、高校を卒業する18歳で、一人前の社会人となるような教育の必要性を述べていました。
 日本で成人年齢を18歳に引き下げる議論は、ずいぶん前から行われています。18歳という数字の理由として、海外ではそれが一般的だから、というものもあるようです。

 今回の成人年齢引き下げ議論は、昨年5月に成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律」いわゆる国民投票法に

第三条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。

という条文、さらに附則には

第三条 国は、この法律が施行されるまでの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

とあることがきっかけとなっています。
 18歳としたのは投票権を与えることで、若者に政治に興味をもってもらい、また若者の意見も政治に反映させていこうとの狙いがあります。

 さて、日本では20か18かとの議論が行われていますが、衆議院憲法調査会特別委員会及び憲法調査会事務局資料(PDF)によると、選挙権年齢データのある182カ国中159カ国で、18歳からの選挙権が認められているそうです。
 また、1989年に国連総会で採択され、日本では1994年批准された「こどもの権利条約(児童の権利に関する条約)」では、

この条約の運用上、児童とは、18歳未満のすべてのものをいう。ただし、当該児童でその者に運用される法律によりより早く成年に達したものを除く。

と、18歳未満で子ども、すなわち18歳以上で成人とみなしています。
 イギリスやドイツなどでは、1960年代から70年代にかけてそれまで21歳だった成人年齢を3歳引き下げ、18歳としました。背景としては、そのころ盛んだった学生運動に歯止めをかけるため、学生に選挙権を与え、公に政治に参加できる機会を作ったのです。
 ヨーロッパではこのような理由から成人年齢を18歳とするところが多いようです。若者が勝ち取った選挙権、成人権といえ、今回の日本の状況とはだいぶ異なります。

 18歳は選挙権うんぬんの前にまだ子どもである、といって引き下げを否定する意見もあります。しかし、ならば20歳ははたして立派な大人といえるのか、という疑いも出てきます。成人年齢を引き下げることで、飲酒や喫煙の年齢制限や少年法の適用についても影響を与えることが予想されます。こういった多方面にわたる議論、法改正が必要なため、成人年齢を引き下げることは容易ではなさそうです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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