
「奨学金」といえば、これを読んでいる中にも、昔お世話になったという方がいるのではないだろうか。大学生らへの奨学金事業を行う独立行政法人日本学生支援機構(JASSO:旧育英会の奨学金事業を継続)は、現在、約97万人もの学生等に奨学金を貸与しているそうだ。しかし、奨学金の貸与終了後に返済を滞納する者も多く、最近では取立てがきびしくなっている。
11日の時事通信ニュースによると、JASSOは、銀行などがつくる信用情報機関に滞納者情報を通報する仕組みを導入する方針を決めた。JASSOは今年3月貸与終了者から住民票の提出の義務化などによる回収のための対策を行ってきたが、滞納者の社会的信用にも関わる今回の方針には目を見張るものがある。ただし、ローン会社ではない独立行政法人が、第三の機関に情報を流す仕組みを疑問視する見方もある。
しかし、それほどまでに滞納額は大きい。JASSOによると、19年度末において、返還期日を1日以上超えて延滞している債権額は660億円にのぼる。ところが、貸与を受けた学生は、貸与終了後に必ず就職できるという保証もなく、毎月支払うのは大変であるようだ。
JASSOの奨学金には無利子の一種と有利子の二種があるが、たとえば大学の4年間に二種で毎月8万円の貸与を受けた場合、月賦で2万円弱の返済を、20年間続けることになる。結婚後も返済が続くという場合も多く、決して負担が軽いとはいえない。また、滞納すると、一種でも二種でも延滞金が課される。
JASSOの奨学金は貸与制であり、返還された奨学金は次の奨学金の財源として循環運用されているが、JASSOの職員が加入する日本育英会労働組合などのように、返済の負担が大きすぎるとし、融資型から給付型の奨学金制度の導入を求める見方もある。
一方、滞納者の中には、経済的事情や体調不良などで返済の困難な者もいるが、返還能力があると思われる中で督促に応答せず、法的処置をとらざるを得ない滞納者も一定数いるようだ。今回のJASSOの方針は、こういったモラルの薄い滞納者への苦肉の策といったところか。
費用捻出の問題、債権回収の問題から、給付奨学金の導入や貸与枠の増減を安易に行うことは難しいが、勉学・返済の意欲のある者が教育を受ける機会を逃さないよう、妥当な奨学金制度のために、奨学金がどのように使われているのか、また正確な滞納の理由などについての調査が進むことを期待したい。

ブランド品を買いあさって自己破産する人より悪質だと思います。