きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
中学受験生はストレス過多? 中学校選択に関する調査
kyoikujin
2008/11/6 掲載
子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準

 Benesse教育研究開発センターは「中学校選択に関する調査報告書」として、中学受験に係わる子どもと保護者の意識・行動について大規模な調査を行い、先月その結果をまとめた冊子を刊行しました。表面的な調査にとどまらず、詳細な調査と、様々な角度からの分析が行われており、中学受験と学校教育の関係を考える際にも役立ちそうです。

 この調査は、昨年12月に、全国の小学6年生1501人とその保護者を対象に行われたものです。現在、全国では14人に1人が私立中に進学し、東京では4割近い子どもが中学受験をするとされているため、受験を行う子どもを一部の例外とみなすことは難しそうです。本調査は、受験をする子どもたちの学校への意識、保護者との関係、受験をしない子どもとの比較など、様々な視点からこと細かに調べているので、学校教育と中学受験との関係を考える際の重要な資料となりそうです。

公立中高一貫校と私立校の志望者の差とは? 受験生の学校生活

 「子どもの学校生活と価値観」の調査では、公立一貫校と私立一貫校のそれぞれの志望者の違いが見られ、興味深いです。「授業中は楽しい」と答えた私立校志望者は69%だったのに対し、公立一貫校志望者の88%が楽しいと答えています。「先生は私のことをよく知ってくれている」「係活動などを積極的にやる」「授業中はすすんで手を挙げる」などの項目でも、公立一貫校志望者が上回っており、学校生活の中で自信を持って活躍できている児童像が思い浮かびます。
 また、以下の「得意なこと・苦手なこと」をたずねた表(Benesse教育研究開発センター 2008年)では暗記の得意な私立校志望者と、活用力のある公立一貫校志望者という対比が見られます。長期間塾に通い、学校以外の世界を持つ私立校志望者の方が、「新しい友だちをつくること」に自信を持っているのも興味深いです。

得意なこと・苦手なこと(希望進学先別)   (%)
公立中学校
進学予定
公立中高一貫校
第一志望
私立中学校
第一志望
新しい友だちをつくること 70.8   72.7 < 79.3
漢字を覚えること 65.0 < 72.7 < 78.5
歌を歌ったり楽器を演奏したりすること 61.9 ≪ 75.0 ≫ 57.8
わからないことを調べること 49.0 ≪ 75.0 ≫ 56.1
自分の意見や考えをまとめること 48.5 ≪ 75.0 ≫ 63.8
リーダーとしてみんなをまとめること 45.2 ≪ 77.3 ≫ 51.7
身のまわりをきちんと整理すること 46.2   45.4 ≫ 32.8
自分の考えをみんなの前で発表すること 41.7 ≪ 65.9 ≫ 53.4
難しい問題の解き方を考えること 39.5 ≪ 65.9 > 56.9
勉強の計画を立てること 33.9 ≪ 50.0 > 42.2

※≪≫は10ポイント以上、<>は5ポイント以上差があるもの。

「心や身体の疲れ」の調査では、私立校志望者の8割が「忙しい」と答えており、また、公立一貫校志望者も「いらいらする」「小さなことを気にしすぎる」「やる気がおきない」「すぐに落ち込む」などの項目で、私立校志望者を上回っており、両者ともストレスや疲労感、多忙感などを感じているといえそうです。

学校の授業は楽しい? 塾と学校の関係

 「授業中は楽しい」という項目に関して、通塾・非通塾、受験をするしないにかかわらず、4分の3ほどの子どもが「楽しい」と回答しています。学校の先生が、どの層の子どもに対しても一定の楽しさを保障した授業を行っていることがうかがえます。
 一方で、中学受験生に限定すると、4割以上の子どもが「受験と関係ないとわかり退屈」と感じているデータもあり、中学受験や後の進学を念頭に置いた場合は、塾の勉強の方が有用で楽しいと思う子どもがいると想定されています。逆に、受験勉強に不安を持つ子どもは学校の勉強に楽しさを見出す傾向があるとされ、受験勉強のストレスにさらされている子どもにとって学校が救いの場になっていると予想されます。

 今回の報告結果は、中学受験に挑む子どものストレスや不安感、それに対する学校の役割など、改めて考えさせられることの多いものになったといえそうです。中学受験をする児童や保護者の心理に興味のある方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。