- きょういくじん会議
8日、先日のきょういくじん会議の記事で紹介した「日本音楽教育学会 第39回全国大会」に行ってきた。あいにく朝は雨がパラついていたが、指導要領が改訂されその動向を探ろうという人も多いのか賑わっていた。
各種研究発表とともに行われたパネルディスカッション「新学習指導要領を読む」は、パネラー各人の役回りが明確で、新指導要領の単なる解説ではない内容となりおもしろかった。本日はこれをご紹介しよう。
司会は静岡大学の北山敦康教授、パネラーは弘前大学の吉田孝教授、愛知教育大学の村尾忠廣教授、作曲家で合唱指揮者の松下耕氏の3名。
吉田教授は、今回の改訂に携わった側の視点として、改訂内容の概要を説明。それに対して村尾教授が批判的な立場からつっこみ、そして松下氏が両者をうけ作曲家の視点からコメントする、というもの。村尾教授の辛口の意見で会場は盛り上がった。
村尾教授は、音楽科における今回の改訂の最大の特徴は、ずばり「大きな改革を見送ったこと」だと述べていた。具体的には、「@授業時数の増加もなく、A共通歌唱教材も(必修曲数こそ増えたが)そっくり踏襲され、B系統学習の復権もならなかった。」ということ。各点に関してもう少し記載しよう。
@ 授業時数
確かに今回の改訂では授業時間増がかなり騒がれているが、1998年に全教科の時間数が削減されたのに対して、10年後の今回、一部の教科のみの増加にとどまり音楽は増加していない。ということは、結果的には音楽の授業時数は減ったまま!である、ということ。
A 共通歌唱教材
村尾教授曰く「共通に教材を設けること自体に意義はないのだが、今掲げられている教材そのものに疑問を感じる。わらべうたの代表が、本当に『ひらいたひらいた』でよいのか。『浜辺の歌』は、本当に日本らしい歌としてふさわしいのか。徹底的なリサーチと専門家による芸術的価値の判断もされずに、そっくり踏襲されたのは非常に不満。」
B 音楽科の系統学習
小・中学校と合計9年間音楽の授業を受けてきても、いったい何人の人が楽譜を読む力がついているか。確かに、算数ができないと引け目を感じても、楽譜が読めないからバカにされる、ということは少ないかも…
10年毎の改訂ということで、改訂に関する話題も色々なところで出てくるが、村尾教授にとっては「そもそも、音楽の授業は教科書も使わず指導要領にも則らずに行われることが多い中、大して変化がない当の指導要領が変わったといって騒ぐこと自体が白々しい。」とのこと。ディスカッションを盛り上げるためにあえて批判的な立場に立った訳でもない本心がうかがえた。一方、吉田教授は、今回は新指導要領の概要説明という立場だったため、吉田教授のブログでも「損な役回りだった」と言っていたが… (松下氏も作曲家の立場から色々述べていたが、ここでは長くなるので次の機会に。)
最後の質疑応答の際にちらっと話題に出たが、音楽の学習指導要領が検討されるのは文科省の「芸術専門部会」。つまり音楽単独ではなく、図画工作・美術・芸術(書道もこちらに入っている)を含めた合同部会。つまり、会議の際は色々な教科のメンバーが集まる訳で、各教科具体的につっこんだ内容までは話し合われないらしい。そもそもここからして問題かもしれない…。
![](/common/img/banner/merumaga_w655h70.png)