- きょういくじん会議
国語科の新学習指導要領に盛り込まれた「伝統的言語文化」の指導。古典に触れる授業では、すでに百人一首を導入されている先生も多いのではないでしょうか? 子どもたちにも広まっているのか、最近では漫画の題材として百人一首が取り上げられることも多いようです。
真剣女子高生の「競技かるた」にかける青春
『ちはやふる』(末次由紀、講談社)は、Be Love誌上で連載されている「競技かるた」を題材にした漫画です。自分自身の夢を持たない小学6年生の綾瀬千早は、競技かるたに打ち込む転校生・綿谷新に出会うことで、競技かるたの魅力を知ります。千早が自分らしい目標を持ち、かるた仲間との友情や別れを通して、成長していくさわやかな物語となっています。
なじみの薄い競技かるたの世界ですが、本作ではその奥深さを知ることができます。札を配置する時の戦略、いち早く聞き取る集中力、そして暗記を繰り返すことで糖分を消費し、1日に3sも体重が減るというハードさ。競技かるたは頭脳と体を駆使する“スポーツ”なのです。
高校生に成長した千早は大会に挑みますが、そこでは大人も子どもも、性別も関係ありません。実際、競技かるたの現クイーンは、15歳で初めてクイーンになってからV4を達成しています。かるたは海外ではあまり行われていないので、作中でも言われるように、高校生で世界一となることも十分に可能なのです。百人一首は、老若男女が楽しめ、かつ奥の深い、魅力的な競技といえそうです。
また、本作では、題名にもなった「ちはやふる 神代も聞かず…」や、日本かるた協会の序歌「難波津に 咲くやこの花…」などの和歌が効果的にストーリーに絡み、古典の世界を自然に味わうことができます。2巻では、それまで耳の良さと集中力に頼っていた千早が、古典マニアの級友に教えられ、和歌に込められた豊かな詩情に気づくシーンが描かれるのですが、このように古典世界が広がることが「伝統的言語文化」の指導で目指していることなのではないでしょうか。
漫画から百人一首の世界を知り、千早と同じように次第に和歌の魅力を知っていく。そのような古典との出会いも、これからはあるのかもしれませんね。
他にもあります、「かるた漫画」の世界
『かるた』(竹下けんじろう、秋田書店)は、少年チャンピオン誌上で連載されていた、同じく競技かるたを題材とした漫画です。独自に技を開発していく展開が少年漫画らしいです。
『まんてんいろは小町』(小坂まり子、小学館)は、競技カルタを題材にした女子小学生向けの漫画です。本格的な内容ではないようですが、低学年でも読めるやさしいつくりになっています。
このように、いろいろな世代に向けて「競技かるた」の漫画が発刊されているのですが、それくらい今の子どもたちには百人一首が広まっているのでしょうか。「伝統的言語文化」を見直すため、大人の方も一読してみる必要があるのかもしれません。