- きょういくじん会議
![MIXA IMAGE LIBRARY Vol.215 お米とご飯](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41zW7l3-0rL._SL130_.jpg)
あるテレビ番組での現農林水産大臣の言葉が印象に残った。「一日に、あと一杯多くごはん(白米)を食べましょう。」とのことだった。時期を同じくして、愛媛県今治市の給食における地産地消の推進を目にした。急速に見直されるごはんと給食の関係を見たい。
見直される「ごはん」
師走に入り既に三日目。今年は食を巡る問題が度々世間を賑わせた。食の安全性や食料自給率低下の問題から、地産地消運動がさらなる高まりを見せている。その中でも日本が誇る「ごはん」が熱い視線を浴びている。農林水産省でも「『めざましごはん』キャンペーン」が立ち上げられている。
ここで先に、なぜ「ごはん」なのかを整理しておく。
- 自給率が極めて高い→地産地消の実施が比較的容易
- 腹持ちが良い→「メタボ対策」ブームに代表される健康的側面
- 一時的な小麦価格の高騰→主食としての米の見直し
ほかにも様々な要素が混ざり合って、ごはんが日本の食の救世主的存在になっている。
食を通じた健康の増進、安全面を考慮しての地元食材の利用に関しては、多くの方がご賛同されるところのものだと思う。家庭においてもその意識が高まっていることは間違いない。では、学校・給食においてはどうか。
現代の給食と食育事情
文部科学省の「学校給食実施状況調査」によると、平成18年度現在、完全給食の実施率は小学校で97.8%・中学校で74.8%に達する。多くの子どもが週に5回は家庭の目の届かないところで食事を摂っていることになる。
元来、日本の給食は極めて健康的なレベルが高いと言われてきた。管理栄養士が栄養バランスを考えて毎日の献立を立てる。わたしの通っていた小学校でも、献立表の中では食材別に三大栄養素別に分けられており、「給食便り」も毎月発行されていた。このレベルの高い給食に、地産地消・近年乱れてきた食習慣の改善の視点が加わり、「米飯給食」の推進につながったと考えられる。
子どもにとっての地産地消とは、単に安全な食材を口にするのみならず、日本の伝統的な稲作を学ぶことでもある。つまり、ごはんは安全・健康的側面と学習教材としての側面を兼ね備えたパーフェクトな食材なのである。だからこそ、平成17年より施行された食育基本法においても、学校における食育の中心として据えられている。
確かにごはんの食育における有効性は大きい。しかし、地産地消という視点においては、都市部と地方で差が出ることが考えられる。単純に言えば、農地の多い地方の方が様々な活動を展開しやすい。今後は、都市部においてどのような工夫をこらしていくかがますます課題になっていくと思う。
今治市の取り組みに見る、おいしい「ごはん」
愛媛県今治市の取り組みが、この問題にヒントを与えてくれるように感じた。今治市は、いまだに地場産物の学校給食への活用が23.7%にとどまる(内閣府「平成20年食育白書」による)中、昭和58年から地元の野菜の活用を行っている。言わば地産地消の先進地域である。米に関しても地元の減農薬米を用い、小麦や大豆も地元産を使う。
特に着目したいのは、米を給食で食べるまでの過程である。玄米で保存し、月に3回精米して学校へ配達している。子どもは「つきたて」「炊きたて」のごはんを口にする。おいしいと好評で、残飯も減ったという。つまるところ、おいしいものは子どもが喜んで食べる。おいしいと感じられる工夫をいかに凝らすかが、食育の一つの柱なのではないだろうか。食べ物や農業を営む方への感謝の気持ちを育てることも、結局はここにつながるのだと思う。
「ごはん」は食育における救世主
地方に比べて地元の食材を目・口にする機会が少ないであろう都市部。限られた敷地内で小さな田んぼを作るだけではなく、「おいしいものを」というもっと単純な視点からの活動推進が望まれる。総合学習や家庭科の時間内での学習活動にも、この観点が欠かせない。
多くの子どもは食べるものを自分で選ぶことができない。しかし、その食に対する意識を高めることはできる。やはり、ごはんは多くの問題を抱える現在の子どもにとって、心と体を健やかに保つ救世主になり得るのではないだろうか。楽しい食が子どもも大人も元気にする―いつの時代も変わらないものである。
- 今治市役所 産業振興部農林推進課「これぞ!いまばりの学校給食」
http://www.city.imabari.ehime.jp/nourin/gkkoukyuusyoku.html
![](/common/img/banner/merumaga_w655h70.png)