きょういくじん会議
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子どもと一緒に居酒屋へ―アイデア勝負の外食産業
kyoikujin and
2009/2/21 掲載
家族で行きたい おいしいお店

 「赤提灯はお父さんの誘蛾灯」…今もなお、長寿アニメやテレビでしばしば目にするこの光景にも、変化の兆しが見られます。
 働く社会人の親交の場・憩いの園であった居酒屋が、「子どもと一緒に行く」場に、一部で変化してきているようです。そのことによるプラス面とマイナス面を考えたいと思います。

 これほどまでに不況と言われている世の中、外食を控えて極力自宅で食事を、という流れは自然なこととして捉えられます。当然、お父さんのお小遣いが減っているご家庭も少なくないと拝察します。ともなれば、その影響を真っ先に受けるのが居酒屋ではないでしょうか。
 実際に多くの外食産業が減益に苦しんでおり、居酒屋産業も例外ではありません。あの手この手で集客に躍起になっておられる様子を目にしますが、とりわけ私の目を惹いたのが「チャイルドルーム」を完備した店舗の展開です。

 今回ご紹介するのは、チムニー株式会社の取り組みです。
 同社が展開する「さかなや道場」稲毛海岸店(千葉県)は、「チャイルドルーム完備」を最大の売りとし、人気を集めています。車のショールームなどでも見かけるこの活動ですが、同店の施設は下記のようなものです。
・最大約20人程度の子どもを収容できる部屋
・遊具やテレビを設置
・チャイルドルームの両サイドに、窓から室内が見られる客席を設置
・土曜日の稼ぎ時には「鯵すくい」などの子ども向けイベントを開催

 この施設、例えばご近所さんと飲みに行くときなど、一定の安心感が得られます。地域の交流の場としても有用でしょう。「飲みに行きたいけれど子どもがいて…」という不満を解消している点は、確かに同店の好調な売り上げにも裏づけされていると思います。

 しかし、「チャイルドルームがあるから」と、安心しきって子どもを居酒屋に連れて行くことに、私は大きな懸念も抱きます。
 まず、安全面での問題です。ファミリーレストランと居酒屋の最も大きな差異は、食事とアルコールのどちらがメインになるかという点です。多量のアルコールを摂取すれば、普段は常識的な人が思いもよらぬ行動をとることもあります。多くの事件が「酔った末に口論となり…」などとして報じられていることからも、決して否定できません。この環境に置いて、扉を一枚隔てただけの空間に子どもを放置することに危険はないのでしょうか。居酒屋には、ファミリーレストラン以上に不特定多数の人が集まります。親だって楽しみたいのは当然ですから、酔って子どもに対する注意が散漫になる状況も予測されます。
 教育(しつけ)面での影響も心配されます。「タバコとお酒は20歳になってから」と学校でもくり返し指導しています。大勢の大人が楽しそうに酒を飲み、タバコの煙をくゆらせ、時に羽目を外して大騒ぎする…子どもはどう感じるのでしょうか。
 また、ファミリーレストランに比べて禁煙・分煙が遅れている居酒屋では、タバコの副流煙による健康への影響もゼロとは言い切れません。

 決して居酒屋が悪いものだとは思いません。チャイルドルーム設置に関しては、評価できる点もあるでしょう。今後、増えていく取り組みだと思われます。
 しかしながら、どんなに設備が充実したところで、最終的には親のモラルの問題であり、設備に頼り過ぎないことが重要だと考えます。加えて、「子連れの方は2時間まで」「チャイルドルームへのスタッフ常置」などの工夫も考えて頂きたいものです。

 居酒屋が、景気回復のけん引役だけではなく、「安全な」家族と地域の交流の場になることを愛飲家一人として心より望みます。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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