きょういくじん会議
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認める? 認めない? 子どもの臓器提供
kyoikujin
2009/2/19 掲載
ニコラスの贈りもの―わが子の臓器提供を決意した父親の手記

 日本で15歳未満の子どもが臓器移植を受けられず、海外に渡るケースが相次ぐため、日本小児科学会は15日、脳死になった15歳未満の子どもからの臓器提供について検討する委員会を発足させ、年内に新たな見解を打ち出す方針を明らかにした。15日の読売新聞の記事が伝えている。

 1997年に施行された現行の臓器移植法では、事前に書面で臓器提供の意思表示をした者であれば家族が拒否しない限り臓器提供をすることが可能だが、15歳未満の子どもからの臓器提供を認めていない。そのため、この法律が及ばない外国で移植手術を受ける例が続いている。
 日本小児科学会のサイトの会長挨拶によると、同学会は、2005年に「現行法における小児脳死臓器移植に関する見解」で以下の3つの論点から小児脳死臓器移植は時期尚早であると報告している。

(1)子どもの自己決定権の確保に社会的合意が得られていない
(2)脳死判定の確実な方法が確立していない
(3)被虐待死の紛れ込みを排除できない

 今回は医療の発達などを理由に、委員会メンバーを再構成してこれまでの見解を見直すことになった。

 子どもの臓器提供に関しては、これまでも臓器提供を可能とする年齢を引き下げる案や、家族の同意があれば提供できるとする案、それに対して虐待で子供を死なせた親が臓器提供に同意する可能性を挙げて対立する意見などがあり、様々な議論が交わされていた。また、仮に子どもからの臓器提供を認める場合でも、臓器の提供に本人の意思を必要とするのかそうでないのかという検討課題もあり、さらにその場合に子どもに自らの命について考えさせる教育の整備等、倫理的な問題以外の課題もある。

 一方、世論は15歳未満の臓器提供に肯定的な見方がやや多いようだ。内閣府が行った臓器移植に関する世論調査(平成20年9月調査)では、15歳未満の子どもからの臓器提供について「できるようにすべきだ」と回答した人が、69.0%で約7割にのぼる。また、「脳死判定後の15歳未満の家族の臓器提供の意思を尊重するかどうか」という問いに対して、「尊重する」と回答した人の割合は69.9%で、家族の同意だけでなく本人の意思により決定すべきとの見方が強いようだ。

 15歳未満の臓器提供で救える命がある一方で、ドナーとなる子どもの命の扱いに関わる問題をどう位置づけていくのか。いずれにせよ、慎重に議論されることが望まれる。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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