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移行内容の準備も―都小学校社会科研究会、発表会開催
kyoikujin
2009/3/5 掲載

 2月24日、東京都文京区立明化小学校で東京都小学校社会科研究会(以下、都小社研)の研究発表会が行われました。都内はもとより平日にも関わらず、神奈川や静岡など近県から足を運ばれる先生方もみられました。特に今回の発表会は「新しい時代に期待される公民的資質の基礎を養う社会科教育」という今年度の年間主題を締めくくる会ということで、いつも以上の賑わいをみせました。

思考と表現の一体化を目指す授業

 今回の研究発表会では、5年生の自然災害の防止など、新学習指導要領の内容も視野に入れた研究発表が行われました。全体を通して思考と表現の一体化を目指した内容で、切り口や最後にどうまとめるかにそれぞれの工夫をみました。たとえば、3年部の「商店のしごと」の発表では、地域に貢献する商店の工夫点や努力をポスターに表し、それを実際に商店の方々に見ていただき、意見をもらっていました。導入部のみでなく、最後まで学習素材と直接向き合う姿勢が印象的でした。また、5年部では授業計画内に「見つめ直す」という独自の視点を入れ、「公民的資質」を養うために「社会への思い」を振り返らせる点が新鮮でした。

講評と授業のポイント

 また各学年の研究発表のあとには、新学習指導要領の改訂に携われた愛知教育大学の寺本潔教授による公開授業、研究発表への講評とアドバイスがありました。都小社研ではもうおなじみの寺本教授。夏に行われた講演では、児童の体に8方位を植えつけると言わんばかりに、全身で地図を表現させる指導法などを見せてくださいました。今回は講評ということで、事前の模擬授業の内容にも触れながら、授業のポイントとして下の2点をあげられていました(意訳含む)。

1.「自分ごとから社会ごとへ
 身の回りの社会事象を、まず児童が自身の出来事(「自分ごと」)として十分に視点を引き寄せ、認識理解させた上で、社会一般の事象(「社会ごと」)へと再び視点を戻し、社会全体を視野を広げさせることが重要。またその際に注意すべきは、「自分ごと」として理解するにも基礎的な知識や学習の順序など、児童の思考を促すためのしくみ作りがまず前提として必要である。なかでも展開の順序は、児童を思考停止に陥らせないためにも気をつけなければならない。

 以前公開授業に参加した際、先生が児童に問い掛けながら学習目標を設定させようとする場面に立ち会いました。もともと学習目標の設定というのは、児童にとって高度なことなのだと思いますが、やはり思考が止まってしまう姿がみられました。ただこういった場面にも導入の順序立てや、問いかけの方法次第で、異なる反応が期待できるのかもしれません。

2.「学習の見える化
 授業内容を可視化しようする試み。教師が授業に先立って構造図を用いて授業内容を体系的に捉える。また授業では、児童に対して関係図をもって授業内容を捉えさせる。児童には授業を振り返らせたとき、その関係図が頭のなかに入っているかが大切である。

 図示することは、ビジネスシーンでも「マインドマップ」や「相関図」など、理解を深めたり、さらに一段上の思考をするために使われることが多いことと思います。それだけ便利なツールですが、児童を相手に授業で使う上では、十分な見方、読み取り方のルール決めや、記号、図の種類を絞るなど工夫が必要だと思われます。

次年度の飛躍にさらに期待

 冒頭でも述べましたが、今回の発表会が都小社研の20年度最後の活動ということもありますが、新学習指導要領の内容も一部扱うなど、今年度の反省と次年度への橋渡しといった印象もあったように感じました。来年度からは移行内容の学習が、現実に始まります。公開授業が行われた教室内には既に地球儀が置かれていたのが印象的でした。教育現場では、早くも移行措置への準備が少しずつ進んでいるようです。次年度も盛り上がるであろう都小社研の活動に注目していきたいと思います。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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