- きょういくじん会議
全国各地でまだまだ花粉症が猛威を振るっているが、中学校数学科の授業で、気象に関する実際の統計資料などを基に、翌年のスギ花粉の飛散量を予測するというユニークな実践をおこなっている教諭がいる。
日常生活や社会の事象を題材に数学の授業をつくる
長野市立柳町中学校の新井仁教諭は、日照時間とスギ花粉の飛散量の相関関係を調べ、翌年のスギ花粉の飛散量を予測して、花粉症対策を考えさせるという授業を開発した。
中学校数学科では、学習指導要領の改訂により、学習し身に付けたものを、日常生活などに活用していくことがより重視されているが、この授業はまさにこのようなタイプの授業に当たると考えられる。
スギ花粉は、前年の7、8月の日照時間が長いと、雄花の成長が促進されて、翌春の花粉飛散量が多くなるという。新井教諭は、この関係に着目し、地元長野県のスギ花粉の飛散量を生徒自身に予測させる授業をおこなっている。
実際の授業の中では、地元新聞の花粉症に関する記事や、公的機関が提供している統計資料を段階的に提示するなどして、生徒自身に課題意識をもたせ、より深く考えさせるための様々な工夫が施されている。また、日本気象協会などの専門機関では、様々な統計資料に基づいて予測を行っていることを生徒に伝え、その後の学習の興味や関心を高めるような配慮がなされている。
授業を支えるICTの活用
このような、日常生活や社会の中で用いられている資料から生徒がグラフを作成したりすることには、実際には様々な困難が伴う。そこで、新井教諭は数値を入力すると相関図やグラフを作成することができる、グラフ電卓(コンピュータでも代用可能)を授業に活用している。
この授業自体は、「関数」領域の学習の1つと想定されているが、資料を整理する作業を省力化して、その分析や活用の方に注力するというのは、今年度から新しく中学校数学科で導入された「資料の活用」領域の学習等でも大切にしたいアイデアと言える。
今回の学習指導要領の改訂では、この「資料の活用」領域において“コンピュータを用いたりするなどして”という表現で、内容の中に初めてコンピュータの活用が位置付けられた。学校におけるコンピュータの設置状況の改善や、ソフト開発の進展により、授業でICTを活用できる条件は徐々に整いつつあり、今後の広がりが期待される。