きょういくじん会議
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数学の授業で古代の土地区画を校庭に再現!
kyoikujin
2009/5/23 掲載

 中学校数学科の新しい学習指導要領では、図形領域のすべての学年の内容に、「観察、操作や実験などの活動を通して」という文言が入った。去る4月27日、そんな活動を学校の校庭をいっぱいに使って行う、ユニークな数学の授業が行われた。

巨大な100マス正方形が校庭に出現!

 この授業を行ったのは、岐阜東中学・高等学校の亀井喜久男教諭と、同中学3年A組の生徒29人。当日は、岐阜新聞や毎日新聞をはじめ、マスコミ各社も取材に訪れた。
 この授業の概要は、2mおきに印が付いた240mのロープなど必要最低限の道具を使って、校庭に60m四方の巨大な正方形をつくり、その内側に直線を引いて、6m四方のマスを100個つくるというもの。このような土地区画は、古代メソポタミア(シュメール)にみられ、今日でも遺構が残る奈良時代の「条里制」にも影響を与えたという。

授業を成功に導く周到な組み立て

 実は、この授業は最初から校庭で行われたわけではない。
 校庭での巨大マスづくりを成功させるためには、ロープを利用してどのように直角三角形をつくるか、またその直角三角形をどのように固定すれば正方形に変形できるか、といったことを考えることがポイントになる。
 こういったポイントについて見通しをもたせるため、亀井教諭は、まず教室において、等間隔で12個の結び目がある小さな紐を使って正三角形、直角三角形、正方形づくりにグループで取り組ませた。正三角形は4:4:4に、直角三角形は、「三平方の定理」をヒントにして、3:4:5に分割して完成させた。さらに、直角三角形の3か所をどのように固定して正方形に変形するかは、生徒たちが授業を進める中で発見した。

数学の源流を通して生活や社会とのかかわりを体感する

 上記のような教室での学習の後、生徒たちは実際に校庭に出て、巨大マスづくりに取り組み、完成後は校舎3階の渡り廊下からできあがった巨大マスを鑑賞した。
 授業後の生徒の感想の中には、「古代の土地区画が自分たちの手によって再現されたと思うとうれしい。三平方の定理がこんなふうに使えるとは。今回学んだことを大切にし、これからの生活に活かしたい」「ラインを引き終わって上から実際に見てみると思った以上にきれいでした。自分たちが行動して勉強することは楽しいのでまたやりたいと思いました」といった言葉がみられた。
 亀井教諭は、「新しい指導要領では、数学と日常生活や社会とのかかわりが強調されているが、抽象化が進んだ現代の数学ではこのことは実は大変に難しい。それだけに数学の源流、創生期の数学に注目すべきだ。(この授業を通して)日本古代の文化や世界最古のシュメールの数学文化を感じてほしい。それが今後の生徒の数学学習にパワーを与えてくれるものと信じている」と語る。

 授業時数の増加に伴って学習内容も増加したため、指導にゆとりがある状況とは言い難いが、1年に一度でも数学の授業にこのような体験を取り入れてみるのはいかがだろうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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