- きょういくじん会議
植物にも「お医者さん」がいるのをご存知ですか? 農作物や植物などの病害を診断・治療・予防するが「植物医師」。法政大学では、2008年度に学部教育ではじめて「植物医師」を養成するコースを設置し、人気を集めているようです。
「植物医師」育成 「植物病院」創設も?
同大学に新設された生命科学部生命機能学科植物医科学専修では、植物の病気の原因となる微生物や害虫類の診断・治療・予防技術を学んだり、化学薬剤や熱・光、栽培技術などの利用、バイオテクノロジー技術などを学び、植物医師の育成を目指しています。6月3日の47News(共同通信)にも紹介されていますが、1年次から専門の実験科目を取り入れるなどの工夫をしているようです。即戦力として産業界と社会に役に立つ人材を育成することも目的としており、「樹木医」を目指す「樹木医補」の資格が取得できる「樹木医演習」や、植物医科学に関わる業界の動向や新たなビジネス創造の手法などについて学ぶ「植物医科ビジネス論」などの授業もあります。
ゆくゆくは、動物と同じように、植物を持ち込んで治療が受けられる「植物病院」の創設も目指しているそうです。植物病院はニーズはあるものの、まだ日本では実現していないようですが、あなたのもっている観葉植物が診てもらえる日は近いかもしれません。
植物医師のオシゴト
ところで、「植物保護士」や「樹木医」というのは何かというと、植物保護に関した資格です。「植物保護士」は国家資格である「技術士」のひとつで、「樹木医」とは民間の資格です。「植物保護士」は植物保護部門での高度な専門応用能力を必要とする事項について、計画・研究・設計・分析・試験・評価、またはこれらに関する指導業務を行う者をいいます。いわば植物保護に関するコンサルタントというところでしょうか。樹木医は、樹木の診断や治療、後継樹の保護育成、樹木保護に関する知識の普及、指導などを行う専門家です。植物の病気を診断し、適正な予防や治療を行なうだけでなく、植物や農作物についての知識を社会に伝えていくことなども、植物医師の大きな仕事のひとつです。どちらも難関といわれる資格ですが、とても重要な仕事をしているのです。
なぜいま植物医師なのか
同大学の植物医科学専修 専修紹介によると、いま、病虫害や雑草害などにより、世界の食糧が失われているそうです。このような食糧生産の問題や食糧難が深刻化する中、最近の分子生物学的研究の発展などにより、植物と病原体の相互作用メカニズムは明らかになりつつありますが、実際に植物の病気の診断・治療・予防を行う人材や、「植物医科学」に関する研究分野が必要となっているようです。
また、家庭園芸を楽しむ人がふえてきたり、環境問題や食の安全に対する意識が高まっていることも、植物医師が求められている理由かもしれません。
さて、来月7月から、同大学小金井キャンパスのオープンキャンパスが開催される予定です。また、9月には植物医師の仕事や、法政大学「医師養成コース」について扱う、高校生や教員、保護者向けの無料のシンポジウム植物医科学シンポジウム 〜植物医師を目指して〜も開催されるようなので、「植物のお医者さん」に興味のある方は足を運んでみては?