- きょういくじん会議
![図書館経営論 (図書館情報学シリーズ)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4762016497.01.MZZZZZZZ.jpg)
1日の朝日新聞の報道によれば、全国の公立図書館のうち、6館に1館が民間企業などに業務を委託しているとのこと。気づかぬうちに、最寄の図書館が民営化されているという方も多いのではないだろうか。図書館は最も身近な公共機関の一つ。その図書館が民営化されるメリットとデメリットについて、様々な指摘がなされている。
民営化で利用者数アップ―ホテルの様なサービスも
都心にある千代田区立図書館にはホテルのようにコンシェルジュが常駐して、図書館内の案内だけでなく、神保町の書店・古書店やレストランの案内までしてくれる。これは、サントリーホールの経営で知られるサントリー・パブリシティ・サービスが関わっているいるサービスだ。イベントの企画等も盛んで、神保町の古書街と共同で行う展示会「としょかんのこしょてん」は25回目を迎える。民間ならではのアイデアと取り組みが高く評価され、Library of the Year 2008の大賞・会場賞を受賞している。
民間に図書館の管理運営が任されるようになったのは、2003年に指定者管理制度が制定されてからだ。それまでも、一部業務を民間に委託することはあったが、指定者管理制度では運営と管理を包括的に民間企業等に代行させることができる。今では、全国に3000ほどある図書館のうち、500か所以上は民間によって運営されているという。
図書館運営の最大手は図書館流通センターで、一部委託も含めると全国で約190か所を運営している。同センターが運営する図書館は、開館日・開館時間の拡大、ITの導入、レイアウトの工夫などでサービス向上を図り、手がけた図書館の多くは入場者数や貸出冊数が増加している。
丸善などの書店や運送会社なども参入し、それぞれの強みを生かして運営に当たっている。図書館流通センターや丸善を傘下に持つ大日本印刷には、図書館を活性化させることで、結果的に出版や印刷業界の利益につなげる、というねらいがあるという。
図書館に民営はそぐわない? サービス低下の懸念も
一方で、図書館の民営化に対して反対する意見も多い。5月31日に文京区大塚で行われた「『図書館民営化』条例の再検討を求めるつどい」では、100人以上の参加があったとの読売新聞の報道もある。文京区立図書館への指定者管理制度導入問題について話し合われ、パブリッシングコメントの9割が否定的な意見であることや、再検討を要望する署名が1290人分集まったことに関して報告があったそうだ。
社団法人日本図書館協会も「公立図書館の指定者管理制度について」(PDF)の中で否定的な見解を述べている。図書館は図書館法により対価を取ることが禁じられており、利益を出すためには人権費を削る必要があるので、サービスの質の低下につながるのではないかとの懸念があるのだ。さらに、指定期間が3〜5年と限られているので、図書館職員に必要な経験が培われずにスタッフが入れ替わる可能性もあるという。指定者管理制度の導入を検討した結果、採用を見送った自治体も少なくない。
課題が残されている図書館の民営化だが、民営図書館に刺激を受けて公営図書館のサービスも向上するのではという声も聞かれ、図書館運営に注目が集まる良いきっかけとなる可能性はある。最近図書館に行かれていない方は、お近くの図書館のサービスをチェックしに行ってみてはいかがだろうか。
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