- きょういくじん会議
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米テキサスで開かれた第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで7日、辻井伸行さんが見事優勝した。日本人初の優勝であると同時に、盲目のピアニストということでも世界中から注目を浴びている。
辻井さんは現在20歳。生まれつき全盲であるが、幼少期からピアノをはじめ、7歳で全日本盲学生音楽コンクール第1位、10歳でリサイタルデビュー、17歳でショパン国際ピアノコンクールの批評家賞を受賞、という輝かしい経歴をもち、すでに数々のオーケストラとも共演している。彼自身、「ピアノを弾くことに困難は感じない。」と言っており、辻井さんとの共演が多い指揮者の佐渡裕さんも、「いつも『全盲のピアニスト』ととらえられがちですが、僕が彼の音楽に共感したのはハンディがあるからではなくて100%音楽的なことに対してでした。」(毎日新聞)と述べている。
確かに今回の国際舞台での優勝は、純粋に彼の音楽そのものが評価された結果なのだが、それでも全国の視覚障害をもつ子どもたちにとっては、辻井さんの快挙が大きな意味を持つのも確か。これをきっかけに、「将来演奏家になりたい!」と思った子どもたちもいるだろう。
ではいったい、視覚障害をもつ子どもたちが音楽を学べる場が、現在どのくらいあるのだろうか。少し調べてみた。
◆筑波大学附属視覚特別支援学校
100年以上の歴史を持ち、高等部音楽科、専攻科音楽科がある。邦楽(筝)・洋楽のコースがある。高等部音楽科は音楽高等学校に準じている一方、専攻科音楽科は生涯学習的な場としての役割ももち、入学者の年齢制限がない。
◆大阪府立視覚支援学校
高等部本科音楽科、専修部音楽科がある。演奏コースとピアノ調律コースがある(ピアノ調律コースは現在募集停止中)。演奏コースでは邦楽(筝・三絃等)・洋楽のコースがあり、アンサンブル学習にも力を入れている。
◆京都府立盲学校
高等部音楽科、高等部専攻科音楽科がある。邦楽(筝・三絃等)、洋楽(ピアノ・声楽・作曲・管弦楽器等)のコースがある。芸術鑑賞会や校内演奏会などの行事もある。
いずれの学校も、器楽や声楽などの演奏技術とともに、専門科目として音楽理論や音楽史、ソルフェージュなどの授業もあり、本格的に音楽を学ぶ環境となっている。卒業後は音楽大学へ進学する人も多いようだ。
音楽は、技術とともに感性が必要な世界。感性の面で優れていることの多い視覚障害のある人々にとって、音楽の世界は、より活躍の可能性が考えられる場だ。ところが、まだまだ数として音楽を学ぶ環境が整っていないのが現状だ。筑波大学附属視覚特別支援学校で邦楽を教える吉澤昌江氏も、月刊『視覚障害』2006年2月号で、「…このように3都市以外には組織化された視覚障害音楽教育の場がないことが、若い視覚障害者にとって大きく音楽の道への門戸を閉ざしている…」と述べている。
今回の辻井さんの快挙で、第2の辻井さんをめざす子どもたちにも光があたるきっかけになれば、と思う。
- 全盲ピアニストの辻井さん、バン・クライバーン国際で優勝(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090608-OYT1T00356.htm - 「ピアノ弾くことに困難感じない」…優勝の辻井さん会見(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090608-OYT1T00583.htm - 恩師ら「障害持つ子に励み」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20090609-OYT8T00151.htm - 人一倍努力「乗り越えられない障害ない」…快挙の辻井さん(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090611-OYT1T00052.htm
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