きょういくじん会議
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みえない人と一緒にみてみる―新しい美術鑑賞の形
kyoikujin
2009/8/26 掲載
エルゴ創刊号[雑誌]

 先日、目のみえる人とみえない人がことばを使って一緒に美術を鑑賞するという活動を耳にしました。目のみえない人がどうやって絵画をみるの?! という驚きから、少し調べてみると教育の世界にも通じるおもしろい発見がありましたのでご紹介します。

ミュージアム・アクセス・グループ MAR

 このような活動を行っている一番大きな団体は、「ミュージアム・アクセス・グループ MAR(まー)」というところです。「MAR」は、1999年に開催された『このアートで元気になるエイブル・アート'99』展(東京都美術館)の関連プログラム「みえない人とみるためのワークショップふたりでみてはじめてわかること」がきっかけで2000年に発足しました。

どんな風に観賞するの?

 MARは1〜2か月に1回程度、みえる人とみえない人とで一緒に美術館を訪れる鑑賞ツアーを行っています。鑑賞ツアーといっても、美術の専門的な知識によるガイドツアーではありません。作品を前に、みえる人とみえない人がごく普通の言葉を使ってイメージを膨らませながら一緒に鑑賞を楽しむというものです。たとえばりんごが描かれた絵画を前にして、みえる人が、「赤いりんごが…」と話しはじめると、みえない人が「赤いってどんな赤?もっと詳しく教えて」と切り返し、みえる人は「うーん。激しいような、熱いような…」と頭をひねる、といったような雰囲気でしょうか。
 MARはガイドする人・される人とか、支援する人・される人といったような一方的で固定化された関係を嫌い、双方向的で柔軟な関係を大切にしているとのこと。このような体験はみえる人にもみえない人にも新しく、刺激的なものであるように思えました。

出会って初めて気づくこと

 美術というとなかなか難しいイメージがあり、作品を言葉にするなんてできるのかな、とも思いますが、この団体は美術作品を正しく理解することを目的としているわけではないようです。むしろ美術鑑賞を切り口に、いつも出会わない人と人が出会い、コミュニケーションすること自体がこの活動のおもしろみと言えるでしょう。また、みえる人とみえない人が一緒にみることで初めて気づくことがある、という「MAR」の考え方は、特別支援教育について考える上でも興味深い視点なのかもしれません。
 鑑賞ツアーは、MARのホームページより、誰でも申し込むことができるようです。関心をもたれた方は、一度ツアーに参加してみてはいかがでしょうか?

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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