- きょういくじん会議
![通常の学級担任がつくる授業のユニバーサルデザイン―国語・算数授業に特別支援教育の視点を取り入れた「わかる授業づくり」 (特別な支援が必要な子どもたちへ)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/449102457X.01.MZZZZZZZ.jpg)
特別支援教育とのコラボで国語の授業を変えようという取り組みが話題になっている。その名も「国語授業ユニバーサルデザイン研究会」。
発達障害の有無にかかわらず、学級の中には理解の早い子、遅い子など多様な子どもたちがいる。特別支援教育の知見を生かすなどして学級全員の子が「わかる・できる」授業づくりをめざす、国語教育では画期的な取り組みだ。
中心となっているのは、桂聖氏(筑波大学附属小学校)と廣瀬由美子氏(国立特別支援教育総合研究所)。国語教育の著名な実践家と特別支援教育の専門家がタッグを組む、このことに大きな意味がある。特に第4回の月例会となった26日には秋田喜代美氏(東京大学大学院)が教育心理学の立場からの講演を行うなど、多方面からのアプローチがなされていることにも注目したい。
特別支援教育の推進?
授業の中で「ついてこられない子」に対して、単純に特別支援教育的な個に応じた指導を取り入れるわけではない。会のホームページにはこうある。
特別な支援が必要なAちゃんのためにする手立てが、実は、理解力はあるけど十分わかっていないBちゃんのためにもなります。また、理解力が優れているCちゃんが、Aちゃんにわかってもらおうとかかわることで、一人ひとりの学び直しや本質的理解を促します。
つまり、通常学級における特別支援教育の推進だけでなく、子どもたち同士のかかわり合いを大切にしながら国語科の指導法を根本的に見直していこうという発想だ。
そのためには、授業のねらいをどう設定するか、教材の提示や発問・指示などの指導言をどう組み立てるかなど、授業改善の視点は多々ある。国語科としての教科の専門性と、指導技術・対応力などの授業力、さらには子どもの認知的・情意的・能力的な特性を見きわめる力が重要になってきそうだ。
まずは子ども理解が大事―第4回月例会から
第4回の月例会が行われた26日、夕方6時から始まった実践報告と講演、それらをもとにした議論は9時過ぎまで熱心に行われた。
一つ目の実践報告は、脳性まひの生徒に対しての言葉の育て方について。二つ目は、通常学級における「気になる子」をまき込んだ説明文指導。いずれも、@まずは困っている子どもの実態をよく知ること、Aクラスの友だちなど周囲の人とのかかわり合いをうまく活用していくこと、などがユニバーサルデザインの授業づくりにとって大事な要素になってきそうだというヒントが得られた。
秋田喜代美氏の講演では、Content-orientedなアプローチ(テキストの内容的な面白さを重視する授業)がもっと重要視されるべきだ、ということが強調された。子どもの学びの過程、学習意欲の喚起という視点から、「全員が、楽しむ・わかる・できる国語授業を」という提言には多くの示唆が与えられたようだ。
これからの国語授業
国語科は何を教えるのか、どう教えるのかがはっきりしない、と言われてきた。「ごんぎつね」を読んで、どっぷり読み浸って劇化までしたけども何の力が付いたのかわからない、といった実践も少なくなかったようだ。
それに対して、「国語授業ユニバーサルデザイン研究会」では、「国語授業は論理で勝負する」など、教師の側の明確な見通しが必要であることを桂氏は強く主張されている。「子ども全員を」論理の世界に連れて行くにはどうすればよいか、このような研究が国語教育の世界で語られることは少なかった。
と同時に、「ユニバーサルデザイン」は、多様な個性をもった子どもたちが学校で学ぶ意味、公教育のあり方など、現代的な課題への提案性も高い。国語授業に限らず、今後の広がりに期待したい。
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