きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
国宝の価値とは? 明治の文化財から初の国宝が誕生
kyoikujin
2009/10/29 掲載
よくわかる国宝 国宝でたどる日本文化史 (楽学ブックス―文学歴史)

 秋は大型連休が多いので、観光地や名所に出かけた方、あるいはこれから出かける予定の方も多いのではないでしょうか。
 ところで、旅先では国宝のほかにも重要文化財や史跡など、様々な文化財の名称を目にしますが、皆さんはそれぞれの違いをご存知ですか。
 16日の朝日新聞の記事によると、東京都港区にある旧東宮御所(現在は迎賓館赤坂離宮)を国宝に指定するという文化審議会の答申が出ました。明治時代以降の文化財が国宝に指定されるのは初めてのようです。

 また、新たに重要文化財や重要伝統的建造物群保存地区として選定された地区もあります。このように文化財には様々な指定がありますが、今回は「国宝」と「重要文化財」、「記念物」の定義について紹介します。

有形文化財

建造物、絵画、工芸品、彫刻、書跡、典籍、古文書、考古資料、歴史資料などの有形の文化的所産で、我が国にとって歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを総称して「有形文化財」と呼んでいます。
(文化庁ホームページより)

国宝・重要文化財

 有形文化財のうち、重要なものを「重要文化財」に指定し、さらに世界文化の見地から特に価値の高いものを「国宝」に指定して保護を図っています。
(文化庁ホームページより)

 価値の高さによって「国宝」と「重要文化財」の指定が異なることがわかります。さらに、文化庁ホームページによると、平成20年12月2日現在で、建造物の国宝が214件、建造物の重要文化財が2,344件指定されているそうです。214件の建造物のうち、皆さんはいくつの国宝が思いつきますか。いくつか例を挙げてみます。
◎国宝
瑞巌寺庫裏(宮城県)、彦根城天守、附櫓及び多聞櫓(滋賀県)、慈照寺銀閣(京都府)、平等院鳳凰堂(京都府)、姫路城大天守(兵庫県)、東大寺金堂 大仏殿(奈良県)、出雲大社本殿(島根県)、大浦天主堂(長崎県) など

冒頭で記した旧東宮御所は、西欧の建築様式と青銅製彫刻などの日本的な装飾が織り交ぜられた建造物で、当時の時代背景をあらわす、文化史的な意義が高く評価され、今回の指定に至ったそうです。

 また、これらの建造物以外の文化財を美術工芸品(絵画、古文書、彫刻など)と呼ばれています。建造物と同じく平成20年12月2日現在で、美術工芸品の国宝は864件、重要文化財は10,350件が指定されています。先に説明したとおり、重要文化財の中で特に価値の高いものが国宝ですから、重要文化財の件数には国宝の件数も含まれています。

記念物

記念物とは以下の文化財の総称である。
1  貝塚、古墳、都城跡、城跡旧宅等の遺跡で我が国にとって歴史上または学術上価値の高いもの
2  庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳等の名勝地で我が国にとって芸術上または鑑賞上価値の高いもの
3  動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの
(文化庁ホームページより)

 これらの記念物のうち、重要なものを、史跡(古墳や社寺跡など)、名勝(庭園や渓流など)、天然記念物(植物や動物など)と種類別に国が指定しています。それらの中で特に重要なものは、それぞれ「特別史跡」、「特別名勝」、「特別天然記念物」に指定されています。平成21年10月1日現在では、1,650件が記念物に指定されています。記念物というと具体的にどんなものが思い浮かびますか。いくつか例を挙げてみます。

◎特別史跡
五稜郭(北海道)、三内丸山遺跡(青森県)、小石川後楽園(東京都)、登呂遺跡(静岡県)、 高松塚古墳(奈良県)、吉野ケ里遺跡(佐賀県) など
◎特別名勝
十和田湖および奥入瀬渓流(青森県・秋田県)、兼六園(石川県)、富士山(山梨県・静岡県)、識名園(沖縄県) など
◎特別天然記念物
阿寒湖のマリモ(北海道)、尾瀬(福島県,群馬県、新潟県)、コウノトリ(兵庫県)、屋久島スギ原始林(鹿児島県) など

 改めて整理してみると、日本には価値ある文化財が数多く存在することが分かります。皆さんがまだ見たことのないもの、知らないものも多いのではないでしょうか。
 これらの文化財は子どもたちが修学旅行などの学校行事で訪れる機会も多いと思います。財団法人日本修学旅行協会が平成18年度におこなった調査では、中学校の修学旅行先のランキングで、1位が京都、2位が東京、3位が奈良となっています。上記で挙げた文化財が多く存在する地域ですね。
 私も修学旅行で京都と奈良へ行き、複数の国宝を目にしました。当時は国宝の意味を正しく理解できていなかったので、「すごいもの」ぐらいにしか思っていませんでした。もし事前に文化財の指定について理解していたら、もっと違う見方ができていたと思います。また次に訪れる機会があれば、それらが国宝に指定された経緯や保存の歴史などを調べて、味わい深く楽しみたいと考えています。

 日本に価値ある文化財が多く存在するのは嬉しいことですが、私たちがそれらの文化的な意味を知り、発信・保存していくことで、価値が高まるものだと思います。
 皆さんの住んでいるまちの周囲にある文化財は、どんなものがありますか。日本の伝統として残したい文化財について、子どもたちに伝えていき、一緒に見つめ直してみるのはいかがでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。