- きょういくじん会議
9日付けの日本教育新聞では大きく2ページを割いて、「民主党中心の新政権が発足したことに伴い」「全国の幼稚園長、小・中学校長、高校長を対象に」した独自アンケート調査の結果を報じた。
有効回答数は395人ながらも、興味深い結果が出た。
主な設問と一位回答の結果は以下のとおり。
高校教育費の無償化(複数回答)
「所得制限を設けた上で授業料以外の教育費負担も軽減」30.9%
教職員数の増加(複数回答)
「35人学級の導入」52.9%
電子黒板の整備
「取りやめ」72.7%
教員免許更新制の存続について
「直ちに廃止する」43.5%
教員養成課程の6年制(複数回答)
「原則は4年制としたまま、教職大学院制度の充実を優先」47.8%
学校理事会構想
「反対」56.7%
教育監査委員会構想(教育委員会制度の抜本的見直し)
「反対」62.5%
マニフェスト以外に期待すること(複数回答)
「公財政支出引き上げ」88.1%
賛成・反対・その他という選択肢の設問もあれば、高校教育費の無償化のように「所得制限なしで無償化」「所得制限設け公私とも授業料無償化」「取りやめ」など複数回答可の設問もあるので、一位回答だからといって一概には判断できない面もあるが、一定の方向性が出ているとも言えるだろう。
全体の傾向としては、学校現場の多忙感、貧困家庭への対応への意識の高さがよくわかる。一方、教育制度改革に関連する項目に関しては、後ろ向きな回答傾向。近頃よく言われるように「改革疲れ」の空気が漂っているようだ。自由記述からは、政策そのものの検証不足を指摘する声や、現場を無視した改革への不満など、民主党マニフェストに対しても懐疑的な見方が多くあるように感じられる。
前政権時代に大きな話題となった「電子黒板の整備」については、「反対」が「推進」22.3%を大きく上回った。財政的な支援は歓迎すべきだが、もっとほかの事に使わせてほしいというのが本音だろう。
自由記述からは、「教員給与の増額」を求める声が目立つ。教員の質の向上のためには、教員養成課程6年制や教員免許更新制のように大学にその責を負わせるよりも、教員数の増加や待遇改善の方が実効があるというのが大方の見方だ。
だが、例えば指導力不足教員については、指導時間にゆとりがあった、待遇も比較的よかった時代を生きてきた世代にこそむしろ問題が多いとも言われている。待遇改善がすなわち教員の質の向上に結び付くかどうかは、やや希望的観測の面もあると言えるだろう。
反対に、全国学力調査や教員免許更新制の存続に対する肯定的な意見の中にも、教員の質の向上へのヒントがあるようだ。
いずれにせよ、現場の声を拾い上げるうえで、このようなアンケート調査は有効に活用できる。トップダウンでないとできない教育改革もあろうが、実効性を担保するには現場の声を知ることも重要だろう。
![](/common/img/banner/merumaga_w655h70.png)