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新旧司法試験―合格者減、志願者減で定員見直しの声
kyoikujin
2009/11/20 掲載
新司法試験未修の合格(うか)り方―未修者救済塾講師が明かす

 法務省は12日、本年度の旧司法試験の結果を発表した。これで、本年の新旧司法試験の結果が出そろったことになったが、司法試験の合格者が減少傾向にあることなどが問題視されつつある。

 法務省の発表によると、今回の旧司法試験の合格者は92人。昨年から50人減となった。2006年からスタートした新司法試験へ受験者が移行しているため、受験者数は年々減少しているのだが、対受験者合格率も4年連続で下がっており、2005年の3.7%から0.6%まで落ち込んだ。

 一方、9月に発表された新司法試験の結果を見ると、合格者数は2043人で初めて前年を下回った。受験者数は7392人で、合格率は27.6%。こちらも前年より5.3ポイント下回り、初めて3割を切ったことになる。新旧合わせた合格者は2135人で、政府の想定した2500〜2900人には及ばなかった。政府は2010年ごろまでに年間の司法試験の合格者数を3000人程度にする目標を掲げているが、達成は難しいと見られている。

 社会人経験者の合格率が低下していることも問題視されており、社会人経験者や他学部で学んだ学生で構成される「未修者コース」の合格者は2割を切っている。法科大学院には、法学部出身者だけでなく幅広い人材を育成するという目的もあったのだが、合格の可能性が高い「既習者コース」の枠を増やす学校も出てきた。早稲田大法科大学院は未修者コースが9割だったが来年度入試からは既習者コースを大幅に増やすことを決めている。本年の試験で合格率が33%となり、東大56%、慶大46%に対し大幅な遅れを取ったことが原因と見られる。

各所から定員見直しの声―就職難、志望者減も

 このような法科大学院のあり方に対して、各方面から見直しの議論が起こっている。9月15日の読売新聞の記事によれば、中央教育審議会大学分科会の法科大学院特別委員会は、今年の新司法試験の結果を受けて、結果が低迷する大学院に対し、大幅な定員削減や、他大学院との教育課程統合の検討などを求めたという。民主党内からも、法科大学院の総定員を削減するため、設置認可基準の見直しをすべきだいう声が出ている。

 さらに、11月15日の読売新聞の報道によれば、法曹人口に伴う司法修習生の「就職難」の可能性が伝えられており、合格率・就職率の低下を背景とした志願者の減少も問題となっている。文部科学省のまとめによれば2009年度の法科大学院入試で、全74校の総志願者数が昨年度より25%減少し、過去最低の2万9714人だった。

 スタートから3年が経ち、様々な問題点が見えてきた新司法試験制度だが、裁判員制度など新たな取り組みを始めた法曹会を担うのは、この制度によって認められる弁護士たちだ。安定した学習環境と雇用が保障されないことで、法曹離れが起きることを危惧する声もある。将来、法曹会を目指す子どもたちが敬遠することのないような、適切な制度の見直しに期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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