きょういくじん会議
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国内初、移植コーディネーター育成コースを開設―杏林大
kyoikujin
2010/1/13 掲載
レシピエント移植コーディネーターマニュアル

 臓器移植法の一部改正により、今年1月17日から、親族に対し臓器を優先的に提供する意思を書面により表示できるようになる。また、7月17日からは、本人の臓器提供の意思が不明な場合も、家族の承諾があれば臓器提供できるようになる。1月10日の読売新聞によると、こういった改正臓器移植法の施行を受け、杏林大は移植コーディネーターの育成コースを4月より開設するとのことだ。

移植コーディネーターとは

 (社)日本臓器移植ネットワークによると、そもそも移植コーディネーターとは移植医療の普及啓発、移植希望者の登録とデータ整備、ドナー情報への対応などの活動を行う職業で、同社団法人に所属する専任の移植コーディネーターと各都道府県の腎バンク・臓器バンク、大学病院に所属する都道府県コーディネーターがある。
 昨年8月21日のきょういくじん会議でも新潟県上越市の市立頸城(くびき)中学校で出前授業が行われたことをご紹介したが、学校教育の場をなどで移植医療の知識と理解を深める講義を行ったり、意思表示カードを配布するのも仕事である。
 また、移植コーディネーターの最重要業務は、臓器提供の候補者があらわれたときの対応であり、これについては以下のように記されている。

臓器提供者発生施設に駆けつけ、主治医から患者さんの状態について情報を得てから、ドナーとして臓器提供ができる状態であるかどうかを判断します。可能であれば家族に対し、家族の意見を尊重しながら臓器提供の機会について説明をします。脳死からの提供であれば、本人の意思の確認と家族の承諾、心停止後の提供であれば家族の承諾を書面にて確認し、必要書類を作成するとともに、検査の手配、レシピエントの選択、移植施設への待機の連絡などを迅速に行います。提供された臓器を、最良の状態で速やかに搬送します。
(中略)
レシピエントの術後の経過を把握し、ドナー家族に対する報告と精神的ケア、レシピエントからドナー家族への感謝の手紙を橋渡しするのも、移植医療の発展には欠かせない重要な業務です。

 いわば臓器提供者や移植患者またはその家族、医師らの橋渡し的な役割であるが、専門性の高い職業であることはもちろん、高いコミュニケーション能力や倫理観、誠実さなどが要求される職業といえるだろう。

どうすれば移植コーディネーターになれる?

 移植コーディネーターになるために必要な条件は、医療資格保有者(看護師、保健師、臨床検査技師等)またはそれと同等の知識を有すると認められる者である(普通自動車運転免許所持を求められることもあり)。今現在、移植コーディネーターの募集は同法人や各都道府県の腎バンク・臓器バンク等により不定期に行われているようだが、毎回募集人数は少なく、狭き門とされている。改正臓器移植法により、5歳未満の方からの脳死下での臓器提供が可能になるため、今後このような人材の必要性は増えることが予想されるが、一体どの程度の需要があるのかは未知数だ。今回新設の専門コースを卒業した学生の就職先があるかどうかは懸念事項となる可能性はある。
 しかし、必ずしも特別な資格をもっていなくても移植コーディネーターになる道はあるため、だからこそ臓器移植医療に関する知識だけでなく倫理面等をふくめた教育が必要になるかもしれない。今回新設の杏林大の専門コースでは、医学だけでなく、法律や倫理などについても学べるようにするということだが、こういった面で成果をあげられることに期待する。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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