きょういくじん会議
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桜の季節、目前! 桜関連ブック・ガイド
kyoikujin oec
2010/3/11 掲載
おひさまえんのさくらのき (あかね・新えほんシリーズ)

 10日の毎日新聞の記事などで報じられているように、高知市では早くも桜(ソメイヨシノ)が開花したそうです。これは観測史上最も早い記録に並ぶ早さとのこと。
 桜が咲くのは年に一回。そこで、本格的な開花を待ちながら、この季節にこそ子供と読みたい本をご紹介します。

幼稚園〜小学校低学年

 この春から幼稚園に行く子供と読みたい絵本は、あまんきみこ(作)・石井勉(絵)「おひさまえんのさくらのき」。幼稚園に行きたがらないたまこちゃんとおばあちゃんの、心温まるお話です。
 もう少し年上の子供たちにおすすめなのは、長谷川摂子(作)・矢間芳子(絵) 「さくら」。桜の木の一年間の様子が、精緻ながらも温かみあふれる絵で表現されており、子供たちの観察力がのびる効果も期待できそうです。

小学校高学年〜中学校

 全国の公立高校入試で何度か出題されたことがある、「さくら」という小説もあります。西加奈子「さくら」。「さくら」と名づけられた犬と、その飼い主である家族たちが苦しみと向き合い、克服していく様子を描いた小説です。
 また、桜を初めとする草木染めで有名な染色家、志村ふくみによる随筆集「色を奏でる」は、自然との向き合い方を考えさせられる一冊。桜色を染めるためには、桜の花を使ってもだめで、○○を使う、という目から鱗が落ちるような話が載っています。この桜の色のエピソードは、光村図書の中学校の教科書に掲載された大岡信の随筆でも紹介されました。

中学校高学年〜高校生

 美しい、きれいな桜が、逆に不安をかきたてるというような感情は、誰もが一度は持つものだと思います。中学校高学年や高校生の子供には、桜の別の一面を感じさせるような作品を紹介してみてもよいかもしれません。
 よく「桜の木の下には死体が埋まっている」というフレーズを耳にします。桜の不気味なほどの美しさを端的に表現したこの言葉、元ネタは梶井基次郎「桜の樹の下には」です。短編ながら、桜を前にして悩む主人公に、共感を覚えられる人も多いことでしょう。
 桜と死体を結びつけた文学として、もうひとつ言及したいのが
坂口安吾「桜の森の満開の下」。ある山賊が美しい女をさらったものの、その女の奔放なふるまいに翻弄されるようになるという筋立てですが、満開の桜の中での虚無感・孤独感が印象的に描かれています。

 …と紹介して参りましたが、桜に関する本は、まだまだたくさんあります。飲食・歓談しながらのお花見もよいですが、桜の木の下で読書を楽しんでみるのもよいかもしれませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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