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全国統一基準の草案を公表、一般の意見を募集中(米国)
kyoikujin
2010/3/29 掲載

 3月10日、米国では幼小中高(K-12)を通した英語/言語科目と数学の全国統一基準(Common Core State Standards)の草案が発表されました。高校卒業までに大学や就職を見越した能力の習得を目指すことが強調されているようですが、4月2日まで一般からの意見を受け付けており、今年の晩春には正式に完成した全国統一基準が公表される予定です。

今回の草案の背景と概要

 米国にはもともと、日本の学習指導要領のように法的拘束力をもつ全国共通の教育基準はありませんが、1990年代、学力の低下に対する懸念が高まったことへの対策として、教育基準の設定を各州に委任し、見直しを図る一種の教育改革が進められました。11日のWashington Post(英文)によると、その結果として、より多くの学校が学力基準に達することができるよう、基準を低めに設定する州が多かったため、専門家の間では課題とされていたようです。

 オバマ政権下では、2020年までに高等教育の卒業者の比率を世界で最も高くすることを目標にした「アメリカ高等教育卒業者増大構想」を打ち出しています。そのような背景を受けて、今回の全国統一基準の草案では、将来の大学や就職での成功に結びつくような知識や技能を高校卒業までに習得する、という見通しに基づいた各学年の学習内容や評価規準が示されています。

英語/言語科目

 英語/言語科目では、リーディング、ライティング、スピーキング&リスニング、文法・語彙などの項目に加え、中学・高校(6〜12年生)では、歴史や社会、科学などに関する書物の読み書き能力を身につけることも求められています。

 付録では、各学年で扱うのに適した物語や詩などの書物のリスト、またライティングの評価の規準例として基準を満たす児童・生徒の作品例も掲載されています。

算数・数学

 算数・数学では、学習内容の明確化・明細化が図られ、基本的な数学的概念を理解することに加え、けたの値や計算の法則に繰り返し立ち戻って習得することに重点が置かれているようですが、問題を解く能力というよりは、数学的な考え方や理解を身につけることが強調されているようです。

 実施めあてには、問題をきちんと理解し最後まで忍耐強く解こうとする態度や、抽象的・数量的に考えること、議論に積極的に参加し自他の推論をクリティカルに考えることなどを含む、8つの項目が挙げられています。また、この教科の基準は、幼稚園から中学校(K-8)までの内容となっているため、付録では高校における授業課程の指針が提示されています。

今後の見通し

 現在この草案は、4月2日までの期間で、一般からのコメント・意見を受け付けています。それらの意見が加味された後、最終的に完成した全国統一基準は、晩春ごろまでに公開される予定とのこと。どのように改善されるのか、注目していきたいと思います。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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