きょういくじん会議
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イギリス総選挙―教育に関する方針の行方は?
kyoikujin
2010/5/10 掲載

 今月6日に行われた英国での総選挙。接戦のすえ、小選挙区制で650議席中306議席(36.1%)を獲得した保守党が第1党となり、36年ぶりにどの政党も過半数を超えない結果となりました。三大政党の教育に関する計画はどのようなものであったのか、それぞれのマニフェストから、振り返ってみたいと思います。

 1997年から与党として政権を握ってきた労働党。しかし、今回の総選挙で、保守党へと政権交代となりました。
 4月20日のguardian.co.ukの記事(英文)をもとに、各政党がどのような教育を目指していたのか、初等・中等教育を中心に振り返りながら、イギリスの今後の教育に関する政策の行方を垣間見てみたいと思います。

保守党の掲げていた教育方針

 保守党は、スウェーデンのフリースクールやアメリカのチャータースクールを模倣した、保護者や信仰・任意などの各種団体によって経営される新しい学校制度の導入を検討。また、国の教育カリキュラムでは歴史・理科・算数など従来の教科科目を重要視することや保育園の無償化などを打ち出していました。

労働党の掲げていた教育方針

 学校・医療サービスの強化や景気回復対策など、社会格差を軽減しより公平な社会を目指すことを押し出してきた労働党。今回の総選挙で示されたマニフェストでは、児童一人ひとり個別に対応した学費制度の導入や、給食をすべて無料にすること、小学校で中国語を教えること、2〜5歳児のための保育園の無償化などを打ち出していました。

自由民主党の掲げていた教育方針

 自由民主党は、教育に投資する予算を大幅に増やし、学級の少人数制と個々の児童に対応した学費制度や補習授業などを施行することを検討。また、国の教育カリキュラムを大幅に削り、1つ以上の第二外国語と分野別の理科の授業を取り入れること以外は、各学校ごとにそれぞれの実態に合ったカリキュラムを自由に設定できるよう主導権と柔軟性を与えることで、スタンダードの向上を目指すことなどを打ち出していました。

保守党の方針に対する他党からの懸念

 3日のBBC NEWS(英文)によると、今回第1党となった保守党の教育に関する方針に対して、他の政党からは次のような懸念が挙げられていたようです。

 教育に投資する予算の増加を掲げていた労働党は、保守党は予算の削減を思案しているため、労働党のような個々に応じた学費制度などの保障は難しいことを挙げています。また、同じく教育への新しい予算の投資による学校への主導権の移行や貧困地域への支援強化を掲げていた自由民主党からも批判の声が上がっていました。

 保守党が第3党の自由民主党と連立政権を成立させることを検討中とのことですが、今後これらのマニフェストに沿ってどのように実現されていくのか、期待したいと思います。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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